専門医の頭痛ブログ

片頭痛の注射治療とは?エムガルティ・アジョビ・アイモビーグの違い|頭痛専門医が解説

片頭痛の治療について医師と相談する患者さんのイメージ。医師は穏やかな表情で説明し、患者さんは真剣に聞いている。

つらい片頭痛、あなたはどんな治療をしていますか? なかでも、注射による治療は、 Monthly Migraine Days(MMD:月あたりの片頭痛日数)を減らす効果が期待できる選択肢の一つです。

その頭痛、自分のタイプを
知ることで変わります。

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【この記事のポイント】
  • ✅ 片頭痛の注射治療(CGRP関連抗体薬)は、 Monthly Migraine Days(MMD:月あたりの片頭痛日数)を減らす効果が期待できる
  • ✅ 現在、エムガルティ・アジョビ・アイモビーグの3種類の注射薬がある
  • ✅ 注射薬の選び方や、いつまで続けるか、費用など、気になる情報をまとめました
目次
  1. 片頭痛の注射治療とは?
  2. 3製剤の効果(臨床試験データ)
  3. 3製剤の比較表
  4. どの注射薬が合う?タイプ別の選び方
  5. 在宅自己注射について
  6. 注射治療を始める目安
  7. いつまで打ち続ける?やめ時の考え方
  8. 注射薬 vs 経口予防薬(ナルティーク・アクイプタ)の使い分け
  9. 費用と保険適用について
  10. 当院での処方について(オンライン診療対応)

片頭痛の注射治療とは?

片頭痛(偏頭痛)の発症に関わるCGRPという物質の働きを抑える注射薬です。月1回の皮下注射で片頭痛の頻度を減らし、従来の予防薬が効かなかった方にも効果が期待できます。現在、日本ではエムガルティ・アジョビ・アイモビーグの3種類が使えます。

3製剤の効果(臨床試験データ)

それぞれの注射薬が月に何日頭痛を減らせるのか、大規模臨床試験のデータをまとめました。

製剤試験名対象片頭痛日数の減少(vs プラセボ)50%以上改善した割合
エムガルティ
120mg
EVOLVE-1/2反復性片頭痛
(月4〜14日)
−4.7日(プラセボ−2.8日)
差: −1.9日
約62%(プラセボ39%)
エムガルティ
120mg
REGAIN慢性片頭痛
(月15日以上)
−4.8日(プラセボ−2.7日)
差: −2.1日
約28%(プラセボ15%)
アジョビ
月1回225mg
HALO-EM反復性片頭痛−3.7日(プラセボ−2.2日)
差: −1.5日
約48%(プラセボ28%)
アジョビ
月1回225mg
HALO-CM慢性片頭痛−4.6日(プラセボ−2.5日)
差: −2.1日
約41%(プラセボ18%)
アイモビーグ
70mg
STRIVE反復性片頭痛−3.2日(プラセボ−1.8日)
差: −1.4日
約43%(プラセボ27%)
アイモビーグ
140mg
STRIVE反復性片頭痛−3.7日(プラセボ−1.8日)
差: −1.9日
約50%(プラセボ27%)

※試験デザインや対象患者が異なるため、製剤間の単純比較はできません。どの製剤もプラセボに対して有意な効果が確認されています。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

数字で見ると「月2日くらいの差?」と思われるかもしれませんが、月10日の頭痛が月6日になるインパクトは非常に大きいです。50%以上改善した方が4〜6割いるという数字も、従来の予防薬と比べて非常に優秀です。

3製剤の比較表(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ)

効果の違いに加えて、投与間隔・自己注射・費用なども重要な選択ポイントです。

エムガルティ アジョビ アイモビーグ
一般名 ガルカネズマブ フレマネズマブ エレヌマブ
ターゲット CGRPリガンド CGRPリガンド CGRP受容体
投与間隔 30日以上あける 28日以上あける 28日以上あける
投与方法 皮下注射(自己注射可能) 皮下注射(自己注射可能) 皮下注射(自己注射可能)
初回投与 初回のみ2本同時投与(ローディングドーズ) 1本 1本
1回の処方本数(在宅自己注射) 最大3本 最大3本(3本まとめ打ち可) 最大3本
薬価(1筒) 約45,165円 約41,356円 約41,356円
月額目安(3割負担) 約13,550円
※初回は2本で約27,100円
約12,400円 約12,400円
主な副作用 注射部位反応、便秘 注射部位反応 便秘、注射部位反応

※薬価は2025年度改定後のものです。3割負担の金額は概算であり、変更される場合があります。

投与間隔「30日」と「28日」の違いが実は重要

エムガルティは30日以上、アジョビ・アイモビーグは28日(4週間)以上あける必要があります。この2日の差が、外来通院で意外と大きな問題になります。

例えば、外来で「次は4週間後の金曜に来てくださいね」と予約すると28日後です。アジョビやアイモビーグなら問題ありませんが、エムガルティは30日経っていないので打てない、ということが頻発します。結局「もう1〜2日待ってから来てください」となり、通院スケジュールが組みにくくなるのです。

この点、在宅自己注射であれば自分でカレンダーを見て30日目に打てるので、投与間隔の制約がストレスになりにくくなります。

エムガルティは初回2本 — 初期費用に注意

エムガルティは初回のみ2本同時に投与する必要があります(ローディングドーズ)。これは早期に血中濃度を上げて効果を実感しやすくするためですが、初月の費用は約27,100円(3割負担)と他の2製剤の倍以上になります。2ヶ月目以降は1本(約13,550円)です。

エムガルティとアジョビはCGRPリガンドに結合するのに対し、アイモビーグはCGRP受容体に結合します。薬価の詳しい比較はこちらをご覧ください。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

「30日ルール」のせいで外来の予約が取りづらい——エムガルティを使っている方からよく聞く悩みです。在宅自己注射に切り替えれば、自分のタイミングで打てるので解決します。頭痛記録アプリで次回投与日を記録しておくとさらに安心です。

どの注射薬が合う?タイプ別の選び方

3種類の注射薬、それぞれに特徴があることがわかりましたね。では、どんなタイプの方がどの注射薬を選ぶと良いのでしょうか?

  • 通院回数を減らしたい方:アジョビは1回の処方で最大3本(3ヶ月分)をまとめて出せるため、通院回数を大幅に減らせます。
  • 自宅で自分のタイミングで打ちたい方:3製剤すべて在宅自己注射に対応しています。
  • 便秘が気になる方:アイモビーグは便秘の副作用が出やすい傾向があります。便秘がちな方はエムガルティやアジョビの方が向いているかもしれません。
  • 1つの注射薬で効果が不十分だった方:エムガルティ・アジョビ(CGRPリガンド抗体)とアイモビーグ(CGRP受容体抗体)は作用機序が異なるため、一方が効かなくても他方で効果が出る可能性があります。

どの注射薬がご自身に合うかは、頭痛のタイプや体質、生活スタイルなどによって異なります。自己判断せずに、必ず医師に相談して、最適な注射薬を選びましょう。

在宅自己注射について

3製剤すべて在宅自己注射に対応しています。自己注射ができるようになると、毎月の通院が不要になり、自宅で自分の都合の良いタイミングに注射できるメリットがあります。在宅自己注射であれば、どの製剤も1回の処方で最大3本まで受け取ることが可能です。

自己注射導入までの流れ

  1. 医療機関で初回〜2・3回の投与:まず対面の医療機関で、医師や看護師の指導のもと注射を行います。注射部位(おなか・太もも・上腕)の選び方、皮膚のつまみ方、針の刺し方、廃棄方法などを2〜3回かけて練習します。
  2. 自己注射の指導・認定:医師が「この方なら安全に自己注射できる」と判断したら、在宅自己注射の指導管理料が算定され、処方箋で注射薬を受け取れるようになります。
  3. 自宅での注射開始:薬局で受け取った注射薬を冷蔵庫で保管し、投与日に自分で皮下注射します。

なお、アジョビだけは1回に3本まとめて投与する用法も認められています(他の2製剤は1回1本ずつ)。3本まとめ打ちなら12週(約3ヶ月)に1回の投与で済むため、通院・投与の手間が最も少なくなります。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

注射が怖い方も多いですが、CGRP注射薬はオートインジェクター(ペン型)やプレフィルドシリンジ(筒型)で設計されており、針も細いので痛みはごくわずかです。2〜3回の練習でほとんどの方が一人でできるようになりますよ。

注射治療を始める目安

注射治療は、誰でもすぐに始められるわけではありません。一般的には、以下のような場合に注射治療が検討されます。

  • 慢性片頭痛の方(月に15日以上頭痛がある)
  • 他の予防薬(内服薬)の効果が不十分な方
  • 他の予防薬(内服薬)の副作用が強く、継続が困難な方

まずは、頭痛専門医を受診して、ご自身の頭痛の状態を詳しく診てもらいましょう。その上で、注射治療が適切かどうかを判断してもらうことが大切です。頭痛ダイアリー(頭痛日誌)をつけて、頭痛の頻度や程度、症状などを記録しておくと、医師に伝えやすくなります。最近では、頭痛記録アプリも便利ですよ。

いつまで打ち続ける?やめ時の考え方

注射治療を始めたら、いつまで続ければ良いのでしょうか? これは、多くの方が抱く疑問だと思います。CGRP関連抗体薬の投与期間については、明確な決まりはありません。一般的には、効果が安定していれば、医師と相談の上、減量や中止を検討します。

ただし、自己判断で急に中止すると、頭痛が再発する可能性もあります。中止する際は、必ず医師の指示に従い、徐々に減量していくことが大切です。CGRP製剤のやめ時については、こちらの記事(CGRP製剤(注射薬)のやめ時はいつ?中止後の再燃リスクと最新知見|頭痛専門医が解説)で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

注射薬 vs 経口予防薬(ナルティーク・アクイプタ)

2025〜2026年にかけて、ゲパント系の経口CGRP関連薬が相次いで登場しました。「注射は苦手だけどCGRP関連の治療を受けたい」という方にとって画期的な選択肢です。

CGRP注射薬(3製剤)ナルティーク(経口)アクイプタ(経口)
投与方法皮下注射(月1回)飲み薬(頓服 or 隔日)飲み薬(毎日1回)
用途予防のみ急性期+予防(デュアル)予防に特化
月額3割負担約12,400〜13,550円約13,200円(予防・隔日15錠)約3,060〜13,150円
向いている方月1回で済ませたい。効果実績重視1剤で頓服+予防をまとめたいコストを抑えたい。用量を調整したい

予防薬全般の解説も併せてご参照ください。

費用と保険適用について

片頭痛の注射治療は、保険が適用されます。3割負担の場合、1ヶ月あたり約12,400〜13,550円の費用がかかります。決して安くはありませんが、費用を軽減できる制度がいくつかあります。

付加給付制度(大手企業の健保組合の方は要チェック)

大手企業の健康保険組合や共済組合には、付加給付制度という独自の医療費助成があることが多いです。これは、1ヶ月の自己負担額に上限(多くの場合2万〜2.5万円程度)を設け、超過分が払い戻される制度です。

CGRP注射薬は月額1.2万円以上かかるため、他の医療費と合算すると付加給付の上限を超える場合があります。在宅自己注射であればどの製剤も最大3本まで処方可能なので、3本まとめて処方する場合(3割負担で約37,000〜40,000円)は付加給付の対象になりやすくなります。

付加給付制度の確認方法

  • 保険証の「保険者番号」が06・31〜34・72〜75で始まる方は、付加給付制度がある可能性が高い
  • 国民健康保険(国保)には付加給付制度はありません
  • ご加入の健保組合のホームページや窓口で「付加給付」「一部負担還元金」について確認してみましょう

高額療養費制度

CGRP注射薬単体では月の上限に達しにくいですが、他の医療費(歯科、他科の治療など)と合算して月の上限を超えた場合は、高額療養費制度の対象になります。

片頭痛の治療費全般については、こちらの記事(片頭痛の薬・費用一覧)でも詳しく解説しています。

当院での処方について(オンライン診療対応)

当院では、オンライン診療でCGRP注射薬(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ)の継続処方に対応しています。

当院の処方ルール

条件処方可否処方本数
他院で自己注射導入済み(お薬手帳 or 紹介状あり)初診から処方可能初回1本、2回目以降は最大2本
他院で自己注射導入済み(証明書類なし)処方不可
自己注射未導入の方当院での初回導入は不可

当院はオンライン診療が中心のため、初回の自己注射指導(対面で2〜3回の練習が必要)は行っておりません。すでに他院で在宅自己注射が導入されている方の継続処方に特化しています。

受診時にお持ちいただくもの

  • お薬手帳(注射薬の処方歴がわかるもの)
  • または紹介状・処方箋の写し

詳しい処方ルールは当院オンライン診療での注射薬処方ルールおよびよくあるご質問をご確認ください。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

「今の病院は遠くて通いづらい」「引っ越しで転院先を探している」——そんな方は、当院のオンライン診療での継続処方をご検討ください。自宅にいながら専門医の診察を受けて、注射薬の処方箋を受け取れます。片頭痛の治療は、続けることが何より大切です。

前川裕貴 医師

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

日本頭痛学会 日本神経学会 日本内科学会

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