専門医の頭痛ブログ

【頭痛専門医が解説】腹部片頭痛とは?小児と成人の症状・治療

小児科医が子供の腹痛を診察している様子。子供は不安そうな表情をしている。

もしかして、お子さんやご自身の腹痛が、ただの胃腸炎ではないかと心配していませんか?実はそれ、腹部片頭痛かもしれません。今回は、頭痛専門医が腹部片頭痛について詳しく解説します。

【この記事のポイント】
  • ✅ 腹部片頭痛は、頭痛を伴わない腹痛発作を繰り返す病気
  • ✅ 小児に多いが、大人でも見られる
  • ✅ 診断には、国際的な診断基準が用いられる
  • ✅ 治療は、生活習慣の改善と薬物療法が中心

腹部片頭痛とは?

腹部片頭痛(ふくぶへんずつう)とは、頭痛を伴わない腹痛発作を繰り返す病気です。「片頭痛」と名前がついていますが、必ずしも頭痛を伴うわけではありません。主に小児に多く見られますが、大人でも発症することがあります。

原因は完全には解明されていませんが、片頭痛と同様に、脳の血管や神経の機能異常が関与していると考えられています。また、セロトニンなどの神経伝達物質の関与も指摘されています(PMID: 38043963)。

「うちの子、よくお腹が痛いって言うけど、ただのわがままかしら?」もしかしたら、それは腹部片頭痛かもしれません。お子さんの様子をよく観察し、気になることがあれば、専門医に相談してみましょう。

小児の腹部片頭痛

まずは、小児の腹部片頭痛について詳しく見ていきましょう。

疫学

小児の腹部片頭痛は、学童期の約2〜4%にみられる比較的commonな病気です(PMID: 26582952)。有病率は、年齢とともに低下する傾向があります。片頭痛の家族歴を持つ子どもに多いことが知られています。

「もしかして遺伝?」と心配される方もいるかもしれませんが、腹部片頭痛になりやすい体質が遺伝する可能性はあります。しかし、生活習慣や環境も発症に関わってくるため、遺伝だけで決まるわけではありません。

症状

主な症状は、以下の通りです。

  • 激しい腹痛:みぞおちやおへそ周りが痛むことが多いです。
  • 吐き気や嘔吐:腹痛に伴って、吐き気や嘔吐が見られることがあります。
  • 食欲不振:腹痛のために、食欲が低下することがあります。
  • 顔面蒼白:発作時には、顔色が悪くなることがあります。
  • 光過敏や音過敏:光や音に敏感になることがあります。

これらの症状が、月に数回程度数時間持続することが特徴です。発作の間隔や持続時間は、個人差があります。

「うちの子、急に『お腹痛い…』って言って、ぐったりしちゃうことがあるのよね」もしかしたら、それは腹部片頭痛かもしれません。症状のパターンを記録しておくと、医師に相談する際に役立ちます。

診断

腹部片頭痛の診断は、症状の問診と身体診察が中心となります。国際頭痛学会が定めた診断基準(ICHD-3)が用いられます。

診断基準(ICHD-3)では、以下の項目が挙げられています。

  • A. 少なくとも5回以上の腹痛発作
  • B. 以下の特徴をすべて満たす
    • 1. 腹痛は正中線上に位置し、曖昧な、または「お腹全体」であること
    • 2. 中等度〜重度の腹痛
    • 3. 1時間以上持続
  • C. 腹痛は以下のうち2項目以上を満たす
    • 1. 吐き気
    • 2. 嘔吐
    • 3. 顔面蒼白
  • D. 診察および適切な検査で、他の疾患を除外できる
  • E. より適切に他のICHD-3の診断名で説明できない

腹部片頭痛の診断には、詳細な病歴の聴取が不可欠です。頭痛日誌アプリ【ズツノート】などを活用して、症状、頻度、持続時間、誘発因子などを記録しておくと、診断の助けになります。

また、他の病気(消化器疾患、婦人科疾患など)を除外するために、血液検査や画像検査(腹部エコー、CT検査など)が必要となる場合があります(PMID: 34600641)。

治療

治療は、以下の2つが中心となります。

  1. 生活習慣の改善:規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。また、ストレスを避けることも重要です。
  2. 薬物療法
    • 急性期治療:発作時の症状を和らげるための薬を使用します。
      • 鎮痛薬:アセトアミノフェン(カロナールなど)やイブプロフェン(ブルフェンなど)などの一般的な鎮痛薬は、軽度〜中等度の腹痛に有効です。
      • 制吐薬:メトクロプラミド(プリンペランなど)やドンペリドン(ナウゼリンなど)は、吐き気や嘔吐を抑えるのに役立ちます。
    • 予防療法:発作の頻度を減らすための薬を使用します。
      • プロプラノロール(インデラルなど):β遮断薬の一種で、血管を拡張させる作用があり、片頭痛の予防に用いられます。
      • シプロヘプタジン(ペリアクチンなど):抗ヒスタミン薬の一種で、食欲増進作用もあります。
      • アミトリプチリン(トリプタノールなど):三環系抗うつ薬の一種で、神経の痛みを和らげる効果があります。

薬物療法については、症状や年齢、体重などを考慮して、医師が適切な薬を選択します。自己判断で市販薬を使用せず、必ず医師の指示に従ってください。当院では、オンライン頭痛外来を開設しており、ご自宅からでも専門医の診察を受けることができます。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

小児の腹部片頭痛は、成長とともに自然に治ることもあります。しかし、症状が重い場合は、日常生活に支障をきたすことがありますので、適切な治療を受けることが大切です。

成人の腹部片頭痛

次に、成人の腹部片頭痛について見ていきましょう。

疫学

成人の腹部片頭痛は、小児に比べてまれです。しかし、子どもの頃に腹部片頭痛だった人が、大人になってからも症状が続くことがあります。正確な有病率は不明ですが、成人の約0.5%にみられるという報告があります。

症状

成人の腹部片頭痛の症状は、小児とほぼ同様です。しかし、成人の場合は、頭痛を伴うことが多いです。また、ストレスや疲労、睡眠不足などが誘発因子となることがあります。

  • 腹痛:持続時間は数時間から数日と、小児よりも長い傾向があります。
  • 吐き気や嘔吐:日常生活に支障をきたすほどの強い吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
  • 頭痛:片頭痛の特徴(ズキズキする痛み、片側性など)を持つことが多いです。
  • 光過敏や音過敏:日常生活に支障をきたすほどの強い光過敏や音過敏を伴うことがあります。

「最近、仕事が忙しくて、ストレスが溜まっているせいか、お腹の調子がずっと悪いんだよね…」もしかしたら、それは腹部片頭痛かもしれません。特に、頭痛持ちの方は、注意が必要です。

診断

成人の腹部片頭痛の診断も、症状の問診と身体診察が中心となります。小児と同様に、国際頭痛学会の診断基準(ICHD-3)が用いられます。

ただし、成人の場合は、他の病気(消化器疾患、婦人科疾患など)との鑑別がより重要となります。血液検査や画像検査に加えて、内視鏡検査や婦人科検診が必要となる場合もあります(PMID: 34600641)。

治療

治療は、小児と同様に、生活習慣の改善と薬物療法が中心となります。

  1. 生活習慣の改善:規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。アルコールやカフェインの摂取を控えることも重要です。
  2. 薬物療法
    • 急性期治療:発作時の症状を和らげるための薬を使用します。
      • 鎮痛薬:アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが使用されます。
      • 制吐薬:メトクロプラミドやドンペリドンなどが使用されます。
      • トリプタン製剤:頭痛を伴う場合に有効です。トリプタン製剤は、脳の血管を収縮させ、炎症を抑えることで、片頭痛の痛みを和らげます。
    • 予防療法:発作の頻度を減らすための薬を使用します。
      • β遮断薬:プロプラノロールなどが使用されます。
      • 抗うつ薬:アミトリプチリンなどが使用されます。
      • 抗てんかん薬:バルプロ酸などが使用されます。
      • CGRP関連薬CGRP関連薬は、片頭痛の発症に関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを抑えることで、片頭痛を予防します。

成人の場合は、トリプタン製剤やCGRP関連薬などの片頭痛治療薬が有効な場合があります。ただし、これらの薬は、医師の処方が必要です。自己判断で使用せず、必ず医師の指示に従ってください。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

成人の腹部片頭痛は、放置すると慢性化することがあります。症状が続く場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。

鑑別診断

腹部片頭痛と間違われやすい病気には、以下のようなものがあります。

  • 過敏性腸症候群(IBS):腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。
  • 機能性ディスペプシア(FD):胃もたれや胃痛などの症状が続く病気です。
  • 慢性便秘症:便秘が慢性的に続く病気です。
  • 子宮内膜症:女性特有の病気で、月経痛や腹痛が主な症状です。

これらの病気は、腹痛を主な症状とするため、腹部片頭痛と間違われることがあります。しかし、それぞれの病気には、特有の症状や検査所見がありますので、医師が適切に鑑別診断を行います(PMID: 34600641)。

日常生活での注意点

腹部片頭痛の発作を予防するためには、以下の点に注意しましょう。

  • 規則正しい生活:毎日同じ時間に寝起きし、食事も決まった時間に摂るようにしましょう。
  • 十分な睡眠:睡眠不足は、片頭痛の誘発因子となります。毎日7〜8時間の睡眠時間を確保しましょう。
  • バランスの取れた食事:栄養バランスの良い食事を心がけましょう。特に、マグネシウムやビタミンB2などの栄養素は、片頭痛の予防に効果があると言われています(PMID: 16558669)。
  • ストレスを避ける:ストレスは、片頭痛の最大の誘発因子です。適度な運動や趣味などを通して、ストレスを解消しましょう。
  • 誘発因子を避ける:特定の食べ物や飲み物、気圧の変化などが、片頭痛の誘発因子となることがあります。自分の誘発因子を把握し、できるだけ避けるようにしましょう。(片頭痛と食事の関係気圧と頭痛(天気頭痛)も参考にしてください。)

まとめ

今回は、腹部片頭痛について解説しました。腹部片頭痛は、小児だけでなく大人も悩まされる病気です。原因不明の腹痛や吐き気が続く場合は、腹部片頭痛かもしれません。気になる症状がある場合は、早めに専門医に相談しましょう。

【この記事のポイント】
  • ✅ 腹部片頭痛は、頭痛を伴わない腹痛発作を繰り返す病気
  • ✅ 小児に多いが、大人でも見られる
  • ✅ 診断には、国際的な診断基準が用いられる
  • ✅ 治療は、生活習慣の改善と薬物療法が中心
頭痛専門医の写真(前川裕貴 医師)
この記事を書いた医師
頭痛センター長 頭痛専門医 前川裕貴

頭痛を改善する一番の近道は、自分の頭痛のクセ(パターン)を知ることです。 「既存のアプリは複雑で続かない…」そんな患者さんの声に応えるため、頭痛専門医である私が自ら、頭痛ダイアリーアプリを設計・開発しました。 完全無料・広告なしの「ズツノート」で、あなたの頭痛の正体を探ってみませんか?

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