専門医の頭痛ブログ

【頭痛専門医が解説】ナルティーク(リメゲパント)はいつ飲む?最適な服用タイミングと「予兆期」への考え方

ナルティーク(リメゲパント)を処方されたとして、いつ飲むのが一番効果的なタイミングなのだろうと悩んでいませんか?

「頭痛がひどくなってからでは遅いと聞くけれど、早すぎてもよくないの?」「吐き気があったらどうしよう?」など、新しいお薬だからこそ、飲み方に不安や疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

この記事では、ナルティーク服用の「タイミング」という実践的な側面に絞って詳しく解説します。

※ナルティークがどのようなお薬か、その効果や特徴(トリプタンとの違いなど)の全体像をまず知りたい方は、こちらの総論解説記事を先にご覧いただくのがおすすめです。

では、ナルティークの効果を最大限に引き出すための「服用のコツ」について、一緒に確認していきましょう。

【この記事のポイント】
  • ✅ ナルティーク服用の基本は「片頭痛発作が始まったら、できるだけ早く」です。
  • ✅ 臨床試験では、服用2時間後の「疼痛消失」で高い有効性が示されています。
  • ✅ OD錠(口腔内崩壊錠)なので、吐き気がある時でも水なしで飲め、タイミングを逃しません。
  • ✅ 頭痛の「予兆期」の服用については、主治医とご自身の発作パターンについて相談することが大切です。

ナルティーク服用の大原則:「発作が起きたら、できるだけ早く」

ナルティーク(リメゲパント)の急性期治療(発作を治す目的)における服用の基本は、他の多くの片頭痛急性期治療薬と同じく、「片頭痛発作が始まった」とご自身で感じたら、できるだけ早いタイミングで服用することです。

片頭痛は、発作が始まって時間が経過し、痛みが強くなってしまう(「中枢感作」という状態が進んでしまう)と、お薬が効きにくくなることが知られています。

「もう少し我慢できるかも…」とためらっているうちに痛みのピークが来てしまい、慌てて飲んでも十分な効果が得られない…という経験は、多くの患者さんにあるのではないでしょうか。

ナルティークも例外ではありません。「痛くなりそう」あるいは「痛みが始まった」という初期の段階で服用することが、その後のつらい痛みを抑えるために非常に重要です。

なぜ「早い」方がいいの?ナルティークが効く仕組み

ナルティークが「早い」タイミングでの服用を推奨される理由は、その臨床試験の結果にも表れています。

日本人成人の片頭痛患者さんを対象とした試験では、ナルティーク75mgを服用した群と、プラセボ(偽薬)を服用した群とで、効果が比較されました。

その結果、主要な評価項目である「お薬を飲んでから2時間後に、頭痛の痛みが完全に消失した人の割合(疼痛消失率)」は、以下のようになりました。

  • ナルティーク群:32.4%
  • プラセボ群:13.0%

ナルティークを飲んだグループは、飲まなかったグループに比べて、統計的にも明らかに高い割合で2時間後に痛みが消えていたのです。 さらに、服用2時間後の機能回復(日常生活に支障がない状態に戻ること)においても、ナルティークは優位性を示しました。

これは、発作の比較的早い段階で服用することで、2時間後という早い段階で痛みを抑え込み、生活への支障を最小限にできる可能性を示しています。

ナルティークが「タイミングを逃しにくい」理由

「早く飲むのが大事」と分かっていても、片頭痛のつらい症状がそれを邪魔することがあります。それは、「悪心・嘔吐(吐き気、もどしてしまうこと)」です。

発作と同時に強い吐き気が来てしまい、「お薬を飲みたいのに、水で飲むと吐いてしまいそうで飲めない…」というジレンマは、患者さんにとって大きな悩みでした。

その点で、ナルティークは非常に大きなメリットを持っています。

ナルティークは「OD錠(口腔内崩壊錠)」という剤形です。これは、口の中に入れると唾液ですぐに溶けるように設計されたお薬です。

  • 水なしで飲める
  • 吐き気が強い時でも服用しやすい

「あ、発作が来たな」と思ったその瞬間に、たとえ外出先で水がなくても、あるいは吐き気があって固形物を飲み込みにくくても、すぐに服用することができます。

「早く飲まなければ」というプレッシャーの中で、「でも飲めないかも」という不安を解消してくれる、患者さんに寄り添ったお薬と言えるでしょう。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

ナルティークは、従来のトリプタン系薬剤(前兆のある片頭痛などで使用)とは異なり、血管収縮作用を持ちません。そのため、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)のリスクも極めて低いことが報告されています。「薬を飲むとMOHが怖い」と服用をためらってしまう方にとっても、ナルティークは「適切なタイミングで飲む」ことを後押ししてくれる新しい選択肢です。

気になる「予兆期」の服用について

片頭痛患者さんのなかには、はっきりとした頭痛が始まる前に、「なんとなく首筋が張る」「生あくびが出る」「光や音に敏感になる」といった「予兆(よちょう)」を感じる方がいます。

「この予兆の段階で飲めば、発作そのものを防げるのではないか?」と期待されるのは、とても自然なことです。

ナルティークの添付文書上の用法は「片頭痛発作の発現時に服用」となっており、「予兆期」での服用が明確に推奨されているわけではありません。

しかし、どのタイミングを「発作の発現」と捉えるかは、個人差が大きいところでもあります。

大切なのは、ご自身の片頭痛のパターンを主治医とよく共有することです。「私の場合は、こういう感覚が来たら、ほぼ100%頭痛が始まります」といった具体的な経験を医師に伝え、ご自身にとってどのタイミングで服用を開始するのがベストなのかを一緒に見つけていくことが、治療の成功につながります。

服用の回数と注意点:1日1回まで

ナルティークを急性期治療(頓用)として使う場合、服用の回数には上限があります。

  • ナルティークの服用は、1日1回(75mg)までです。
  • 服用して効果が不十分だった場合でも、同日中に追加で服用することはできません。

また、ナルティークは「予防治療」(発作を減らす目的)として、1日おき(隔日)に服用することもあります。

もし予防として隔日で服用している日に、たまたま頭痛発作が起きてしまった場合は、その日の予防の分が「急性期治療」を兼ねることになります。

ご自身が「急性期(頓用)のみ」の処方なのか、「予防(隔日)+発作時の頓用」という処方(デュアルユース)なのかによっても使い方が異なりますので、必ず主治医の指示に従ってくださいね。

ナルティーク(ゲパント系薬剤)は、片頭痛治療の新しい選択肢です。その特徴をよく理解し、ご自身の生活リズムや発作のパターンに合わせた「最適なタイミング」で活用していきましょう。

頭痛専門医の写真(前川裕貴 医師)
この記事を書いた医師
頭痛センター長 頭痛専門医 前川裕貴

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