片頭痛治療は**CGRP**を標的とする時代へ。先行した**注射薬**との**違い**や、待望の飲み薬「**ゲパント**」について関心が高まっています。数年前に予防薬として登場したCGRP関連の注射薬は、多くの患者さんにとって希望の光となりました。そして今、ついに待望の内服薬が登場し、治療の選択肢はさらに大きく広がろうとしています。この記事では、この新しい治療の流れと、ゲパント系薬剤がどのような役割を担うのかを詳しく解説します。
- ✅ 片頭痛の悪玉物質「CGRP」を狙う薬には、先に登場した「注射薬」と、新しい「飲み薬(ゲパント)」があります。
- ✅ ゲパントは、注射に抵抗があった方や、痛い時だけ使える薬が欲しかった方にとって待望の選択肢です。
- ✅ 2025年9月、日本初のゲパント系薬剤「リメゲパント(販売名:ナルティーク®OD錠)」が承認されました。
- ✅ ナルティーク®OD錠は1剤で「急性期治療」と「予防療法」の2つの役割を担う画期的な薬剤です。
CGRPを狙う新時代の片頭痛治療薬
近年、片頭痛治療は「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質をターゲットにすることで、飛躍的な進歩を遂げました。CGRPは片頭痛の発作中に放出され、頭の血管を拡張させたり炎症を引き起こしたりする「痛みの根本原因」の一つと考えられています。
このCGRPの働きを邪魔することで片頭痛を抑え込もう、という発想から生まれたのが**「CGRP関連薬」**です。そして、この中には大きく2つのタイプがあります。
タイプ1:CGRP関連抗体薬(注射薬)
2021年に日本に登場し、片頭痛の「予防療法」に革命をもたらしたのがこのタイプです。アジョビ®、エムガルティ®、アイモビーグ®といった薬剤がこれにあたります。
月に1回(あるいは3ヶ月に1回)の皮下注射で、CGRPの働きを長期間にわたって抑え込み、頭痛の回数や程度を劇的に減らす効果が期待できます。非常に画期的な薬ですが、「予防にしか使えない」「自己注射が必要」といった特徴がありました。
タイプ2:CGRP受容体拮抗薬(飲み薬=ゲパント)
そして、注射薬の登場から数年を経て、ついに登場したのが待望の経口薬(飲み薬)であるゲパント系薬剤です。注射薬がCGRPそのものやその受け皿(受容体)に長期間くっつく抗体であるのに対し、ゲパントは低分子化合物で、より短時間だけCGRPの受け皿をブロックします。この性質の違いが、薬の使われ方の違いに繋がります。
「注射薬」と新しい「飲み薬(ゲパント)」はどう違う?
同じCGRPを標的にする薬ですが、注射薬と飲み薬(ゲパント)では役割や特徴が異なります。どちらが良い・悪いではなく、患者さんの状況に応じて選択肢が増えた、と考えるのが良いでしょう。
CGRP関連抗体薬(注射薬) | ゲパント系薬剤(飲み薬) | |
---|---|---|
目的 | 予防療法のみ | 急性期治療 と 予防療法 |
投与方法 | 月1回 or 3ヶ月に1回の皮下注射 | 経口投与(頓服 or 定期服用) |
効果の持続 | 長時間(数週間~1ヶ月) | 短時間(数時間~1日程度) |
主な役割 | 頭痛のベースラインを下げる | 今ある痛みを止める/予防もできる |
代表薬 | アジョビ®, エムガルティ®, アイモビーグ® | ナルティーク®OD錠(リメゲパント) |
このように、注射薬が「頭痛の起きにくい身体の土台を作る」のに長けている一方、ゲパントは「今起きている発作を止める」、あるいは「手軽に予防を始める」といった役割が期待されます。
注射薬の登場も大きなニュースでしたが、やはり注射に抵抗がある方や、まずは手軽な飲み薬から試したいという方は多くいらっしゃいました。今回、ゲパントという飲み薬の選択肢が加わったことで、より多くの患者さんがCGRP関連薬の恩恵を受けられるようになります。
【詳述】国内初の経口薬リメゲパント(ナルティーク®OD錠)
2025年9月19日、日本初のゲパント系薬剤としてリメゲパント(販売名:ナルティーク®OD錠)が製造販売承認を取得しました。これは、日本の片頭痛治療における歴史的な出来事です。
ナルティーク®OD錠の特徴
ナルティーク®OD錠は、水なしでも口の中で速やかに溶けるOD錠(口腔内崩壊錠)で、外出先などでの急な発作にも対応しやすいのが特徴です。そして最大のポイントは、1剤で「急性期治療」と「予防療法」の2つの役割を持つことです。
- 急性期治療として:片頭痛発作が起こった時に1回1錠を服用します。
- 予防療法として:頭痛の頻度を減らす目的で、1日おきに1回1錠を定期的に服用します。
このユニークな特徴により、患者さん一人ひとりの頭痛のパターンに合わせた、非常に柔軟な使い方が可能になります。
ゲパントと従来薬(トリプタン)との大きな違い
CGRP関連薬という新しいカテゴリーと、これまでの急性期治療薬の主役だった「トリプタン系薬剤」との比較も重要です。最大の違いは、血管への作用です。
トリプタン系薬剤は拡張した血管を収縮させて効果を発揮するため、心筋梗塞や脳梗塞などの既往がある方には使えませんでした。一方、ゲパント系薬剤は血管を直接収縮させる作用がほとんどないため、これまでトリプタンが使えなかった方にも使用できる可能性があります。
ゲパント系薬剤の副作用と注意点
ゲパント系薬剤は副作用が比較的少ないとされていますが、主な副作用として吐き気(悪心)や眠気(傾眠)が報告されています。症状が気になる場合は、必ず医師に相談してください。また、薬の使いすぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛:MOH)を避けるためにも、用法・用量を守ることが大切です。
【重要】緊急を要する危険な頭痛のサイン
片頭痛とは別に、くも膜下出血など命に関わる病気が原因の頭痛もあります。以下のサインが見られた場合は、すぐに救急車を呼ぶか、救急病院を受診してください。
- 突然、バットで殴られたような激しい頭痛
- ろれつが回らない、手足の麻痺・しびれ
- 物が二重に見える、高熱を伴う
- これまでに経験したことのない最悪の頭痛
※当院は予約制の外来クリニックであり、救急医療には対応しておりません。
CGRP関連薬という新しい治療の柱に、注射薬に加えて「ゲパント」という飲み薬が登場したことで、片頭痛治療は真のオーダーメイドの時代を迎えたと言えるでしょう。
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