慢性頭痛の日本での疫学と経済的損失――欠勤より大きい「出勤しているのに働けない」問題
日本では頭痛は珍しくありません。見えにくい損失の多くは、休むこと(アブセンティーズム)よりも、出勤しているのに力を発揮できないこと(プレゼンティーイズム)から生まれています。
慢性頭痛とは?
一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛など)が繰り返し起こり、生活や仕事に支障をきたす状態を指します。中でも慢性片頭痛は「月15日以上の頭痛が3か月超続き、そのうち月8日は片頭痛の特徴を満たす」と定義され、就労への影響が大きいサブタイプです。
日本の疫学:どれくらいの人が悩んでいる?
- 片頭痛の年間有病率はおよそ8%台。女性に多く、30–40代でピーク。
- 未受診が多い:症状があっても医療に繋がっていない人が目立ちます。
- 慢性化は負担大:月15日以上の頭痛(慢性群)では生活・就労の支障が顕著。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 片頭痛の有病率 | 成人の約8%台 |
| 受診・診断 | 未受診/未診断が依然多い |
| 慢性片頭痛 | 就労・生活の負担が最大、対策優先度が高い |
仕事の生産性を削る二つの要因
1) アブセンティーズム(欠勤)
頭痛で仕事を休むこと。平均的な欠勤の割合は小さめでも、積み重なると無視できません。
2) プレゼンティーイズム(出勤しているのに働けない)
頭痛を抱えたまま出勤し、集中力や処理速度が落ちること。多くの試算で、こちらが経済的損失の主因になります。
※複数研究の傾向を簡易に可視化したイメージです(厳密な統計図ではありません)。
経済的損失:個人と社会にどれだけ響く?
- 個人レベル:欠勤よりもプレゼンティーイズムの損失が大きい傾向。年単位では数十万~百数十万円規模に達する報告もあります。
- 社会全体:国内の間接費用は兆円規模の推計があり、主因はプレゼンティーイズムです。
慢性化(発作日数の多い群)ほど影響が大きく、早期の診断・予防戦略がカギになります。
受診までのポイント
- 誘因と頻度を客観視:予約後に当院からカルテID付きの頭痛問診票と頭痛日誌をお渡しします(参考:日誌フォーム)。
- 急性期+予防の最適化:薬の使い過ぎは薬剤使用過多による頭痛(MOH)の一因になります。頻度や種類は診療で一緒に最適化します。
- 前兆タイプの把握:キラキラ視覚などがある方は前兆のある片頭痛の知識を。
- 女性特有のパターン:月経周期で悪化する方は月経関連片頭痛の対策を。
- 職場とのすり合わせ:“静かな席”“短時間オフ”“フレックス”などの配慮で、休む前に下がる生産性を底上げします。
頭痛専門医のひとこと
「欠勤を減らす」だけでは足りません。出勤時のパフォーマンス低下をどう抑えるかが、個人にも会社にも最も効きます。予約後の頭痛日誌で傾向を見える化し、急性期と予防の両輪で慢性化を食い止めましょう。
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