「毎月、この数日だけが地獄のようにつらい…」そんな経験はありませんか?
もし月経(生理)の前後や、月経が始まってから数日間にだけ決まってズキンズキンと強い頭痛がくるなら、それは「月経関連片頭痛」かもしれません。月経関連片頭痛は、女性ホルモンの変動と深く関わっており、適切な対処と「予測」でコントロールしやすくなる頭痛です。
でも、安心してください。月経関連片頭痛は、「いつ来るか」が予測しやすい頭痛でもあります。予測ができれば、先回りして対策を打つことができます。
この記事では、なぜ月経と頭痛が関係するのか、そして「毎月のつらい数日間」を少しでも楽にするための具体的なコツを、一緒に見ていきましょう。
- ✅ 月経関連片頭痛は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が引き金になります。
- ✅ まずは「頭痛ダイアリー」で、自分の痛みのパターン(月経周期のどの時期か)を把握することが最重要です。
- ✅ 痛みの「山場」が予測できれば、医師の指導のもと「短期予防」という先回りの対策が可能です。
- ✅ 薬の飲みすぎは、かえって頭痛を悪化させる(MOH)可能性があるので注意しましょう。
なぜ月経の時期に頭痛がひどくなるの?
「どうしていつも生理の時だけ…」と思いますよね。その大きな理由の一つに、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の急激な変動が関係していると考えられています。
排卵後から月経前にかけて、このエストロゲンが急激に減少する時期があります。この「ホルモンのゆらぎ」が、脳の血管や神経に影響を与え、片頭痛の引き金になると言われているのです。
国際頭痛分類(ICHD-3)では、月経との関連で起こる片頭痛を以下のように分類しています。
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 純粋月経時片頭痛 | 月経が始まってから2〜3日間(月経開始前後2日間を含む)にだけ頭痛発作が起こり、他の時期には起こらないタイプ。 |
| 月経関連片頭痛 | 上記の月経期にも頭痛が起こるが、それ以外の時期(排卵期など)にも頭痛が起こるタイプ。 |
実際には、後者の「月経関連片頭痛」である方が多い印象です。どちらのタイプであっても、月経期に起こる頭痛は、他の時期の片頭痛よりも痛みが強く、長く続きやすい、薬が効きにくい、といったつらい傾向があることが知られています。
対策の第一歩:あなたの「痛みやすい日」を知る
月経関連片頭痛の対策で、何よりも(本当に、何よりも)重要なのが「記録すること」です。
なぜなら、「いつ痛くなるか」が分かれば、次にお話しする「急性期治療」や「短期予防」といった対策の当て方が、格段に正確になるからです。
まずは3ヶ月、記録してみましょう
- 月経が始まった日(と終わった日)
- 頭痛が起こった日
- (できれば)頭痛の強さ(例:我慢できる、仕事に支障あり、寝込む)
- (できれば)薬を飲んだ日と、その薬の名前・回数
カレンダーや手帳、スマートフォンのアプリ(「頭痛ダイアリー」などで検索すると色々あります)に、まずは「痛かった日」と「月経のあった日」を印していくだけでも大丈夫です。
3ヶ月ほど続けると、「あ、私はいつも月経が始まる1日前から2日目までが一番つらいな」という、あなただけの「山場」が見えてきます。これこそが、治療の最大のヒントになるのです。
「今、痛いとき」の乗り切り方(急性期治療)
パターンが分かるまでは、まず「今来ている痛み」をどう乗り切るかが大切ですね。
月経関連片頭痛も、基本的には通常の片頭痛と同じ「急性期治療」を行います。
- 早めに薬を飲む
「あ、いつもの片頭痛が来たな」と感じたら、我慢せずに早めに鎮痛薬(NSAIDs:ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)や、片頭痛の特効薬である「トリプタン系薬剤」を飲むことが大切です。月経期の頭痛は強くなりやすいため、タイミングを逃さないことが重要です。
(薬の詳しい使い分けについては、「片頭痛の急性期治療:トリプタン/レイボー/市販薬の使い分け」の記事も参考にしてみてください)
- 環境を整える
可能であれば、暗めで静かな場所で少し休みましょう。光や音の刺激が頭痛を悪化させることがあります。こめかみを冷やしたり、カフェインを含む飲み物(コーヒーや緑茶など)を少量とったりすることで楽になる場合もあります。
- 薬の回数に注意!
つらい時期が続くと、つい薬を飲む回数が増えがちです。しかし、鎮痛薬やトリプタン系薬剤を月に10日以上(薬剤の種類によっては15日以上)飲んでいると、かえって頭痛が治りにくくなる「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」を引き起こす危険があります。記録をつけて、薬の飲みすぎになっていないか、いつも意識しておきましょう。
予測して備える「短期予防」という選択肢
頭痛ダイアリーをつけて、自分の「山場」が予測できるようになったら、非常に有効な選択肢が「短期予防」です。
これは、頭痛が起こると予測される日の前日(または2日前)から、痛みが本格化する前から計画的に薬を飲むことで、つらい「山場」の痛みを軽くする、あるいは起こさないようにする方法です。
使用する薬は、医師の指導のもと、以下のようなものが検討されます。
- 鎮痛薬(NSAIDs):ロキソプロフェン、ナプロキセンなどを、決まった日数(例:月経開始前から3日間など)、1日2〜3回、定期的に服用します。
- トリプタン系薬剤:月経期の頭痛が特に重い場合、鎮痛薬(NSAIDs)と併用したり、トリプタン系薬剤自体を予防的に(例:1日2回、数日間)使用したりすることがあります。
この方法は、自己判断でダラダラと続けると、前述のMOH(薬剤の使用過多)のリスクを高めてしまいます。必ず医師と相談のうえで、「あなたの周期」に合わせた最適な薬と日数を設計してもらうことが不可欠です。
月経関連片頭痛の診療で一番の「武器」になるのは、患者さんがつけてくれた「頭痛ダイアリー」です。これがあると、「じゃあ、今回は月経開始予定日の1日前から、このお薬を3日間だけ飲んでみましょう」という、具体的な作戦が立てられます。毎月のことだから…と我慢せず、まずは記録をつけることから始めてみませんか?
日常生活でコンディションを整えるコツ
薬での対策とあわせて、月経前後の「ゆらぎやすい時期」をうまく乗り切るために、生活のコンディションを整えておくことも大切です。
- 睡眠リズムを一定に:寝不足はもちろんですが、「週末の寝だめ」のような急激な睡眠時間の変化も片頭痛の引き金になります。できるだけ毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。
- カフェインのとり方:月経前は特にカフェインに敏感になる方もいます。コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの量を一定にするか、つらい時期は少し控えてみるのも良いでしょう。
- 適度な運動と水分補給:軽いストレッチやウォーキングは、血行を良くし、自律神経を整えるのに役立ちます。(激しい運動は片頭痛を誘発することがあるので注意)。また、こまめな水分補給も大切です。
- ストレス管理:月経前はイライラしやすくなることも。意識的にリラックスする時間(お風呂にゆっくり入る、好きな音楽を聴くなど)を作ってみましょう。
(注意)いつもと違う激しい痛みはすぐに医療機関へ
いつもの月経関連片頭痛だと思っていても、もし「今までに経験したことのない最悪の頭痛」や「突然バットで殴られたような激痛」、「ろれつが回らない、手足の麻痺」などを伴う場合は、くも膜下出血など別の危険な病気の可能性があります。
その場合は、すぐに救急車を呼ぶか、脳神経外科などの救急医療機関を受診してください。(当院のようなオンライン診療やクリニックは、こうした救急疾患には対応できません)
月経関連片頭痛は、予測ができる頭痛です。あなたのパターンが分かれば、対策はぐっと立てやすくなります。毎月のつらい数日間をあきらめず、一緒に楽にする方法を探していきましょう。
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