片頭痛の痛みが起きた時に飲む「急性期治療薬」。これまでは「トリプタン」が中心でしたが、最近「レイボー」という新しいお薬が登場しました。レイボーとトリプタンの併用ルールや、それぞれの薬の違いについて、詳しく知りたいと思ったことはありませんか?
「トリプタンが効かなかった時にレイボーを飲んでもいいの?」「どれくらい時間を空ける必要があるの?」そんな疑問をお持ちの方も多いかもしれません。片頭痛のお薬は、正しく使うことがとても大切です。今回は、この2つのお薬の併用ルールと、それぞれの特徴について、専門医の視点から優しく解説しますね。
- ✅ レイボーとトリプタン系薬剤は、24時間以内に両方飲むことはできません。
- ✅ どちらか一方の薬を飲んだら、次のお薬(同じ薬でも、もう一方の薬でも)を飲むまでに最低24時間空ける必要があります。
- ✅ レイボーは脳の血管を収縮させない新しいタイプのお薬で、トリプタンが効かない方や心血管リスクがある方にも使えます。
- ✅ レイボーは「めまい・ふらつき」の副作用が特徴で、服用後8時間は車の運転が禁止されています。
片頭痛の「急性期治療薬」とは?
まず、基本から確認しましょう。片頭痛の治療薬には、大きく分けて2種類あります。
- 急性期治療薬(頓服薬): 頭痛が「起きてしまった時」に、その痛みを鎮めるために飲むお薬。
- 予防薬: 頭痛が「起きないように」、頭痛の回数や程度を減らすために毎日(または定期的に)使うお薬。
今回お話しする「レイボー」も「トリプタン」も、どちらも1. の急性期治療薬です。つまり、痛みが出た時の「お守り」のようなお薬ですね。
これまでは、この急性期治療薬の主役は「トリプタン系薬剤」でした。しかし、2022年に「レイボー(一般名:ラスミジタン)」という、これまでとは作用の仕組みが異なる新しいお薬が登場し、治療の選択肢が広がりました。
「レイボー」と「トリプタン」はどう違うの?
同じ急性期治療薬ですが、レイボーとトリプタンは「どこに効くか」が根本的に異なります。この違いが、特徴や副作用の違いにもつながっています。
作用の仕組みの違い
- トリプタン系薬剤
脳の血管(主に硬膜の血管)にある「セロトニン1B/1D受容体」という部分に作用します。これにより、拡張した血管を収縮させたり、痛みの原因となる炎症物質が出るのを抑えたりして、頭痛を和らげます。 - レイボー(ラスミジタン)
脳の神経そのものにある「セロトニン1F受容体」という部分に作用します。血管にはほとんど作用せず(つまり血管を収縮させません)、痛みの信号が脳に伝わるのを直接ブロックするようなイメージです。
それぞれの特徴を比べてみましょう
この作用の違いによって、お薬の特徴も変わってきます。分かりやすく表にまとめてみましょう。
| 特徴 | トリプタン系薬剤 (例:スマトリプタンなど) |
レイボー (一般名:ラスミジタン) |
|---|---|---|
| 主な作用 | 脳血管の収縮、神経炎症の抑制 | 神経活動の抑制(血管収縮作用なし) |
| どんな人に? | 片頭痛治療の第一選択薬 | ・トリプタンが効かない方 ・トリプタンの副作用が辛い方 ・心血管リスク*でトリプタンが使えない方 |
| 主な副作用 | 胸の圧迫感(トリプタンタイトネス)、倦怠感、眠気 | めまい、ふらつき(特に多い)、眠気、だるさ |
| 運転 | 服用後の運転は注意が必要 | 服用後最低8時間は運転禁止 |
*心筋梗塞や脳卒中の既往がある方、コントロール不良の高血圧がある方などは、血管を収縮させるトリプタンが使えない場合があります。
レイボーの最大のメリットは、「血管を収縮させない」ことです。これにより、これまで心臓や血管の持病でトリプタンを使えなかった方にも、新しい治療の道が開けました。また、トリプタンが効かなかった方や、胸が締め付けられる感じ(トリプタンタイトネス)が苦手だった方にとっても、大切な選択肢になりますよ。
【最重要】レイボーとトリプタンの併用ルール
さて、ここが一番大切なポイントです。「トリプタンを飲んだけど効かないから、レイボーを追加で飲みたい」と思うかもしれませんが、それには厳格なルールがあります。
結論から言うと、レイボーとトリプタン系薬剤を「24時間以内」に併用(両方飲むこと)はできません。
これは、添付文書(お薬の説明書)にも明記されている重要なルールです。
- 例1:朝9時にトリプタンを飲んだ。→ 効果がなくても、レイボーを飲めるのは翌日の朝9時以降です。
- 例2:夜8時にレイボーを飲んだ。→ 効果がなくても、トリプタンを飲めるのは翌日の夜8時以降です。
なぜ24時間も空ける必要があるの?
レイボーとトリプタンは、作用する場所(受容体)は少し違いますが、どちらも「セロトニン」という物質に関連するお薬です。両方を短い間隔で飲むと、お互いの作用が強まりすぎて、予期せぬ副作用(セロトニン症候群など、体にセロトニンが過剰になる状態)が出るリスクが否定できないためです。
安全に治療を続けるために、「片頭痛の急性期治療薬は、飲んだら24時間は次の薬(同じ薬でも別の薬でも)は飲めない」と覚えておいてくださいね。
知っておきたい注意点(副作用と薬価)
レイボーとトリプタンは、それぞれ注意すべき副作用が異なります。特にレイボーは新しいお薬のため、特徴的な副作用を知っておくことが大切です。
レイボーの最も重要な注意点:「めまい」と「運転禁止」
レイボーは、トリプタンに比べて「めまい」や「ふらつき」「眠気」といった中枢神経系(脳)の副作用が起こりやすいことがわかっています。
そのため、レイボーを飲んだ後は、最低8時間は自動車の運転や、危険を伴う機械の操作が禁止されています。
これは非常に重要なルールです。例えば、「仕事で車を運転する日」や「大事な会議がある日中」などは使いにくく、「もう帰って寝るだけ」という夜のタイミングで使う、といった工夫が必要になるかもしれません。
薬価(お薬の値段)の違い
お薬の値段も気になるところですよね。
- トリプタン系薬剤:多くの種類でジェネリック医薬品(後発品)が発売されており、比較的安価(1錠100円~数百円程度)です。
- レイボー:新しいお薬(先発品)であり、ジェネリック医薬品はありません。薬価はトリプタンに比べて高価(1錠数百円~千円程度)です。
(※薬価はあくまで目安です。処方日数や剤形(錠剤、点鼻薬など)によって異なります。)
どんな薬も飲みすぎは禁物です(MOH)
レイボーもトリプタンも、片頭痛のつらい痛みを和らげてくれる大切なお薬です。しかし、どちらのお薬も、飲む回数が多くなりすぎると、かえって頭痛を悪化させてしまう危険性があります。
それが「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」です。
急性期治療薬を月に10日以上(または15日以上、お薬の種類によります)飲んでいる状態が続くと、脳が痛みに敏感になり、ほぼ毎日のように頭痛が起こるようになってしまうのです。
「レイボーが出たから、トリプタンと合わせて月に20日飲める」というわけでは決してありません。レイボーもトリプタンも、MOHの原因になるお薬です。飲む日数の合計が月10日を超えそうな場合は、急性期治療薬の使い方を見直すだけでなく、「予防薬」を使って頭痛そのものを減らす治療を検討すべきサインです。自己判断で併用ルールを破ったり、飲む回数を増やしたりせず、必ず主治医の先生に相談してくださいね。
ご自身の頭痛治療について不安なことや、お薬の使い分けについて知りたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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