専門医の頭痛ブログ

【頭痛専門医が解説】ナルティーク(リメゲパント)とは?片頭痛の新薬の効果・薬価・使い方・トリプタンやレイボーとの併用に関してを詳説

**ナルティーク(リメゲパント)**は、片頭痛治療における新しい選択肢として登場した「ゲパント系」と呼ばれる経口薬(飲み薬)です。

片頭痛に長年悩んでこられた方、今までの薬では十分な効果を感じられなかった方にとって、新しい希望となるかもしれません。この記事では、ナルティークがどのようなお薬で、これまでの治療と何が違うのか、専門医の視点から優しく解説していきますね。

【この記事のポイント】
  • ✅ ナルティークは「急性期(痛い時)」と「予防(痛くならないため)」の両方に使える新しい飲み薬です。
  • ✅ 従来のトリプタン系薬剤が持つ血管収縮作用がないため、心血管系への不安がある方にも使いやすい選択肢です。
  • ✅ 薬の使いすぎによる頭痛(MOH)のリスクが極めて低いと報告されており、MOHで悩む方にも適しています。
  • ✅ 薬価(お薬代)はトリプタンのジェネリックより高額ですが、CGRP注射薬とは同程度です。

ナルティーク(リメゲパント)とは?

ナルティーク(一般名:リメゲパント)は、「ゲパント系」という新しいグループに属するお薬です。

片頭痛の痛みには、「CGRP」という物質が深く関わっていることが分かっています。CGRPは、頭の血管を広げたり、痛みの情報を脳に伝えたりする働きを持っています。ナルティークは、このCGRPが働くための「受け皿(受容体)」に先回りしてフタをすることで、CGRPの働きをブロックし、片頭痛の痛みや発作を抑えるお薬です。

この「CGRPを狙い撃ちする」という点は、すでに使われているCGRP関連の「注射薬(アジョビ、エムガルティ、アイモビーグ)」と同じです。ナルティークは、このCGRPを抑える治療を**「飲み薬(経口薬)」**で、しかも**「急性期」と「予防」の両方で**行えるようにした、画期的なお薬と言えます。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

ナルティークはOD錠(口腔内崩壊錠)なので、水なしでもサッと飲めるのが特徴です。片頭痛の吐き気で水を受け付けない時でも服用しやすいのは、患者さんにとって大きなメリットですね。

ナルティークの「2つの使い方」:急性期と予防

ナルティークの大きな特徴である「急性期治療(発作が起きた時)」について、『じゃあ、具体的にいつ飲むのが一番効果的なの?』という疑問も湧いてきますよね。その“最適な服用タイミング”については、こちらの記事(ナルティークはいつ飲む?最適な服用タイミング)で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

ナルティークの最大の特徴は、同じ「75mg錠」というお薬を、2通りの目的で使えることです。これを「デュアルユース(二刀流)」と呼ぶこともあります。

1. 急性期治療(痛い時の頓服)

片頭痛発作が「起きてしまった時」や「起きそうな時」に、痛みを鎮めるために飲みます。国内の臨床試験では、服用して2時間後に痛みが消失した方の割合が、プラセボ(偽薬)と比べて有意に高かったことが示されています。

2. 予防治療(発作を起こりにくくする)

片頭痛発作が「起きないようにする」ために、症状がない時も定期的に飲みます。具体的には「1日おき(隔日)」に1回服用します。これにより、片頭痛が起こる日数を減らす効果が期待できます。

このように、1つのお薬で「攻め(急性期)」と「守り(予防)」の両方ができる点が、これまでの治療薬にはなかった大きな強みです。

ナルティークの用法・用量と薬価(自己負担額)

ナルティークの処方を考える上で、用法と費用はとても大切なポイントです。ここでは、保険診療(3割負担)の場合の目安をお示しします。

ナルティークOD錠75mgの薬価は、1錠 2923.20円です。(2024年時点)

投与パターン 月間投与錠数 薬剤費(10割) 自己負担額(3割) 想定される使い方
急性期(月4回) 4錠 約 11,693円 約 3,508円 トリプタンが使えない方の頓服
急性期(月8回) 8錠 約 23,386円 約 7,016円 発作頻度がやや多い方の頓服
予防(1日おき) 15錠 約 43,848円 約 13,154円 予防治療として定期服用
予防+急性期追加 19錠 (15+4) 約 55,541円 約 16,662円 予防しつつ、発作時も使用(※)

(※)予防(1日おき)で服用しない日に発作が起きた場合、その日を急性期治療として服用(合計で1日1錠まで)する使い方です。

ご覧の通り、トリプタン系薬剤のジェネリック(数十円〜)と比べると、1回あたりの費用は高額になります。そのため、トリプタンで安価に十分な効果が得られている方が、あえてナルティークに切り替える必要は少ないかもしれません。

一方で、「予防治療」としての月額(約13,154円)は、CGRP抗体注射薬(アジョビ、エムガルティなど)の自己負担額(約12,000円〜13,500円)と、ほぼ同じです。 「注射薬と同じくらいの費用で、注射の手間や抵抗感なく、飲み薬でCGRP関連の予防治療が受けられる」というのが、ナルティークの予防投与の位置づけになります。

他の片頭痛薬との違いは?(トリプタン・レイボー)

ナルティークは、従来の飲み薬とどう違うのでしょうか? 特に「トリプタン系薬剤」や、同じく新しい薬である「レイボー(ラスミジタン)」との違いを見てみましょう。

1. トリプタン系薬剤との違い

最も大きな違いは「血管収縮作用の有無」です。

  • トリプタン系薬剤(イミグラン、ゾーミッグなど): 血管を収縮させることで頭痛を抑えます。この作用のため、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの既往がある方や、コントロール不良の高血圧がある方には使用できません(禁忌)
  • ナルティーク(ゲパント系): CGRPをブロックするお薬で、血管収縮作用がありません。そのため、トリプタンが使えなかった心血管系のリスクがある方にも、安全に使える経口の急性期治療薬となります。

また、トリプタンが効かなかった(不応)方や、副作用(胸の圧迫感、倦怠感など)が辛かった(不耐)方にとっても、ナルティークは新しい選択肢となります。

2. レイボー(ラスミジタン)との違い

レイボーもナルティークと同じく「血管収縮作用がない」新しい急性期治療薬で、心血管リスクのある方に使えます。しかし、両者には決定的な違いがあります。

  • レイボー(ラスミジタン): 「ジタン系」という薬で、脳に直接作用します。鎮痛効果が期待できる一方、めまい、眠気、だるさなどの中枢神経系の副作用が比較的高頻度に起こります。そのため、「服用後8時間は運転や危険な機械操作をしてはいけない」という制限があります。
  • ナルティーク(リメゲパント): 「ゲパント系」という薬で、レイボーに比べてめまいや眠気といった副作用は少ないと報告されています。運転などの制限もありません

この違いから、使い分けは明確です。

心血管リスクがある方の使い分け

  • ナルティーク: 日中(仕事中や運転前)の発作に。日常生活への影響を最小限にしたい場合の第一選択。
  • レイボー: 夜間や休日など、服薬後にすぐ休める(運転の必要がない)状況での発作に。

さらに、レイボーは急性期治療のみの適応ですが、ナルティークは予防治療にも使えるという大きな違いがあります。

ナルティークとMOH(薬剤の使用過多による頭痛)

片頭痛治療において、ナルティークが最も期待されている側面の一つが、MOH(薬剤の使用過多による頭痛)との関係です。

MOHは、トリプタンや鎮痛薬などの急性期治療薬を月10日以上のように頻繁に使いすぎることで、かえって頭痛が慢性化・難治化してしまう状態です。

ナルティークに関して、海外の長期予防試験(52週間)では、MOHの発生は「観察されなかった」と報告されています。これは、ナルティークがMOHを引き起こすリスクが極めて低いことを強く示唆しています。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

これはMOH治療の考え方を大きく変える可能性があります。従来、MOHの治療は「原因薬(トリプタンなど)をやめる」ことから始めましたが、その離脱期には辛い反跳頭痛が起きていました。 ナルティークは、その辛い離脱期の頭痛を抑えるために(急性期使用)、あるいはMOHから離脱しつつ頭痛を予防するために(予防使用)、安全に使える可能性があるのです。MOHから抜け出すための新しい「出口戦略」として、非常に期待されています。

CGRP注射薬からの切り替えは可能?

すでにCGRP抗体注射薬(アジョビ、エムガルティ、アイモビーグ)で予防治療を受けている方から、「飲み薬のナルティークに切り替えたい」というご相談を受けることも増えてきました。

切り替えを希望される主な理由は以下のようなものです。

  • 注射(針)そのものへの恐怖感や抵抗感がある。
  • 自己注射の手技や、薬剤の管理(冷蔵保存など)が負担。
  • 注射薬の効果が次の投与日の前に切れてしまう感じがする(Waning-off)。

ナルティークは注射薬と作用する場所(CGRP)が同じであるため、理論上は切り替え(スイッチング)が可能と考えられます。

ただし、注射薬から飲み薬への切り替えに関する確立された手順(プロトコル)は、まだ本邦では定まっていません。注射薬は体内に長くとどまるため、注射薬の効果が切れてくるタイミングを見計らってナルティークの予防投与(隔日)を開始する、といった方法が考えられますが、これは医師との綿密な相談の上で進める必要があります。

ナルティーク服用の注意点(飲み合わせなど)

ナルティークは安全性の高いお薬ですが、いくつか重要な注意点があります。特に「飲み合わせ(薬物相互作用)」です。

ナルティークは、主に肝臓の「CYP3A4」という酵素で分解されます。そのため、この酵素の働きを強く邪魔する薬や、逆に強く働かせる薬・食品とは一緒に使えません。

ナルティークとの併用を避けるべき例

  • 強いCYP3A4阻害剤(ナルティークの血中濃度が上がりすぎる): 一部の抗生物質(クラリスロマイシンなど)、抗真菌薬(イトラコナゾールなど)
  • 強いCYP3A4誘導剤(ナルティークの血中濃度が下がりすぎ、効果がなくなる): 一部の抗けいれん薬、抗結核薬(リファンピシンなど)、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

特に、サプリメントに含まれていることがある「セイヨウオトギリソウ」は注意が必要です。ナルティークを処方される際は、必ず今飲んでいるお薬やサプリメントを医師・薬剤師に伝えてください。

また、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)や末期腎不全(eGFR 15未満)の方には、安全性が確認されていないため投与を避けることになっています。

トリプタンやレイボーとの併用は?

「ナルティークを予防で飲んでいる日に、発作が起きたらトリプタンを使ってもいいですか?」という質問もよく受けます。

  • トリプタンとの併用: ナルティークとスマトリプタン(イミグランなど)は、体内で分解される経路が異なるため、理論上は併用のリスクは低いと考えられます。しかし、他のトリプタン(例:エレトリプタンはCYP3A4で代謝)との併用は注意が必要です。現時点で、積極的な併用が推奨されているわけではなく、医師の慎重な判断が必要です。
  • レイボーとの併用: ナルティークとレイボーは代謝経路が異なるため、薬物動態的な相互作用のリスクは低いと考えられますが、両剤とも新しい薬であり、併用に関する安全性データはまだありません。

まとめ:新しい治療の選択肢

ナルティーク(リメゲパント)は、片頭痛治療における「安全な選択肢」「MOHへの福音」「革新的なデュアルユース」「経口予防のニューカマー」として、多くの患者さんにとって新しい希望となるお薬です。

特に、以下のような方には、一度専門医にご相談いただく価値があるでしょう。

  • 心血管系のリスク等でトリプタンが使えなかった方
  • トリプタンが効かない、または副作用で使えなかった方
  • 急性期治療薬の使用頻度が高く、MOHが心配な方、またはすでにMOHの方
  • CGRP注射薬の費用は許容できるが、注射の手間や抵抗感から解放されたい方

もちろん、すべての方にナルティークが第一選択となるわけではありません。高額な薬剤であることや、飲み合わせの注意点もあります。大切なのは、あなたの頭痛のタイプ、頻度、ライフスタイル、そしてこれまでの治療で何に困っていたのかを医師と共有し、最適な治療法を一緒に見つけていくことです。

当院でも、オンライン診療を通じてナルティークの処方に関するご相談や、他の治療法との比較検討が可能です。長年の片頭痛の悩みを、あきらめないでくださいね。

頭痛専門医の写真(前川裕貴 医師)
この記事を書いた医師
頭痛センター長 頭痛専門医 前川裕貴

頭痛を改善する一番の近道は、自分の頭痛のクセ(パターン)を知ることです。 「既存のアプリは複雑で続かない…」そんな患者さんの声に応えるため、頭痛専門医である私が自ら、頭痛ダイアリーを設計・開発しました。 必要な機能だけに絞ったシンプルな「Myカルテ」で、まずは無料で、あなたの頭痛の正体を探ってみませんか?

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