専門医の頭痛ブログ

【頭痛専門医が解説】前兆のある片頭痛(オーラ)|見え方の異常と対処・治療

「前兆のある片頭痛(オーラ)」について、特徴的な見え方(閃輝暗点)や対処法、脳梗塞との違い、治療(予防薬)を頭痛専門医が解説します。

「頭痛が始まる前に、決まって目の前にギザギザした光が見える」「視界の一部がキラキラして見えにくくなる」「片方の手や顔がしびれる感じがする」

こんな不思議な体験をしたことはありませんか? もし、その症状の後にいつものつらい頭痛がやってくるとしたら、それは「前兆のある片頭痛(片頭痛オーラ)」かもしれません。

片頭痛をお持ちの方のうち、約2~3割の方にみられる症状ですが、初めて経験すると「目がおかしくなった?」「脳梗塞の前触れ?」と、とても不安になりますよね。この記事では、この「前兆(オーラ)」とは一体何なのか、その特徴と安全な対処法について、優しく解説していきます。

【この記事のポイント】
  • ✅ 片頭痛の前兆(オーラ)は、頭痛が始まる前に起こる一時的な神経症状で、「閃輝暗点(せんきあんてん)」という視覚の異常が最も一般的です。
  • ✅ オーラは5分以上かけてゆっくり広がり、60分以内に完全に消えるのが特徴です。
  • ✅ お薬(頓服薬)を飲むタイミングは、オーラが消えて「頭痛が始まったらすぐ」が基本です。
  • ✅ オーラがあっても、多くは危険なものではありませんが、脳梗塞などとの見極めが重要な場合もあります。(特にピル内服中の方)
  • ✅ オーラの頻度が多い、または生活に支障がある場合は、「予防治療」も大切な選択肢になります。

これって前兆(オーラ)? 典型的な症状

片頭痛の前兆(オーラ)は、国際頭痛分類(ICHD-3)において、「片頭痛発作に先立ち、または片頭痛発作中にみられる、可逆性(元に戻る)の中枢神経症状」と定義されています。…少し難しいですね。

簡単に言うと、「脳の一時的な機能障害によって起こる症状で、必ず元に戻るもの」という意味です。これは、脳の表面を電気的な興奮が波のようにゆっくりと伝わっていく現象(皮質拡延性抑制:CSD)が原因と考えられています。

最も多いのは「視覚」に関するオーラですが、他にもいくつかの種類があります。

典型的な前兆(オーラ)の種類

オーラのタイプ よくある症状の例 特徴的な経過
視覚オーラ
(閃輝暗点)
・ギザギザした光、キラキラした光が見える
・波打つような線が見える
・視界の中心(または一部)が欠けて見えなくなる
5分以上かけてゆっくり拡大し、
60分以内に消失する
感覚オーラ ・片方の手の指先から腕へ、または顔の半分へ、
 チクチク・ジンジンとしたしびれが移動する
5分以上かけてゆっくり拡大し、
60分以内に消失する
言語オーラ ・言いたい言葉がうまく出てこない
・ろれつが回りにくい、言い間違える(失語様症状)
5分以上かけてゆっくり拡大し、
60分以内に消失する

大切なポイントは、これらの症状が「5分以上かけてゆっくりと広がり」「60分以内には必ず消える」という時間的な特徴です。例えば、「突然、視界の半分が全く見えなくなった」や「突然、手足が完全に麻痺した」というのは、オーラとは異なる可能性が高く、注意が必要です。

前兆から頭痛へ… 時間の流れと対処のタイミング

前兆のある片頭痛は、特徴的な時間の流れをたどります。

  1. 前兆(オーラ)期(5分~60分): キラキラした光やしびれなどが現れます。この時点では、まだ頭痛は起きていないか、非常に軽いことが多いです。
  2. 頭痛期(4時間~72時間): オーラが消えるか、消えかけた頃に、いつものズキンズキンとした片頭痛が始まります。
前兆 → 頭痛の流れ(イメージ)

お薬(頓服薬)はいつ飲むのがベスト?

患者さんから最も多くいただく質問の一つが、「お薬を飲むタイミング」です。

基本ルール:オーラが消えて、「頭痛が始まったら」すぐに飲む

片頭痛の頓服薬(特にトリプタン系薬剤)は、オーラの原因(CSD)には直接作用せず、その後に起こる頭痛(血管の拡張や炎症)を抑えるお薬です。そのため、オーラだけの段階(まだ痛くない時)に飲んでも十分な効果が得られず、かえって薬が効いてほしい「頭痛期」のピークに薬の効果が切れてしまう可能性があります。

「オーラが出たら、まず休む準備。そして頭痛が来たら、我慢せず即飲む」と覚えておきましょう。

オーラが来た時の具体的な対処

  • 可能であれば、すぐに静かな、少し暗めの部屋で休める準備をします。
  • お水と、処方された頓服薬(トリプタンや鎮痛薬)を手元に用意します。
  • オーラが消えて、頭痛が「始まった」と感じた瞬間に、お薬を飲みます。
  • 吐き気が強い方は、処方された吐き気止めを一緒に飲むと、お薬の吸収が良くなり効果が出やすくなります。

ただし、頓服薬の飲み過ぎには注意が必要です。お薬を飲む回数が月に10日以上になりそうな場合は、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を避けるため、予防治療を検討すべきサインです。

脳梗塞やTIA(一過性脳虚血発作)との違い

オーラ、特にしびれや言語障害が出ると、脳梗塞やその前触れであるTIA(一過性脳虚血発作)ではないかと心配になりますよね。この2つを見分けるポイントは、症状の「現れ方」と「持続時間」です。

項目 片頭痛オーラ(典型例) 脳梗塞 / TIA(危険なサイン)
症状の現れ方 5分以上かけて「ゆっくり」広がる
(例:指先→腕→顔へと徐々にしびれが移動)
「突然」完成する
(例:突然、片方の手足が動かなくなった)
症状の種類 チクチク、キラキラなど「陽性症状」が多い 感覚がない、見えない、動かないなど「陰性症状」が多い
持続時間 60分以内に「必ず消える」 TIAでも数分~数十分。脳梗塞なら持続する
その後の症状 いつもの片頭痛(ズキンズキン)が続く 頭痛はないか、あっても「いつもと違う」激しい痛み
頭痛専門医の前河医師
頭痛専門医のひとこと

オーラは「ゆっくり広がり、必ず消える」のが鉄則です。もし、「突然の麻痺」「1時間以上続く症状」「経験したことのない激しい頭痛」であれば、オーラとは考えにくいです。その場合は、ためらわずに救急病院を受診してくださいね。

【重要】安全のための注意点(ピルと喫煙)

前兆のある片頭痛の方は、脳梗塞のリスクが前兆のない片頭痛の方よりわずかに高いことが知られています。そのため、特に注意していただきたいことがあります。

【警告】ピル(エストロゲン配合薬)と喫煙

「前兆のある片頭痛」をお持ちの方は、原則として「エストロゲン(卵胞ホルモン)を含むピル」を内服できません。これは、脳梗塞のリスクを大きく高めてしまうためです。

また、喫煙も同様に脳梗塞の強いリスク因子です。前兆のある片頭痛の方は、必ず禁煙をしてください。

ご自身の月経困難症や避妊の治療でどのお薬が安全か、必ず主治医(産婦人科医・頭痛専門医)にご相談ください。

緊急受診が必要な危険なサイン

いつものオーラと違う、以下のような症状が出た場合は、すぐに救急医療機関を受診してください。

救急受診の目安

  • 突然発症した麻痺、ろれつが回らない、意識がおかしい
  • オーラの症状(視覚異常やしびれ)が1時間以上たっても消えない
  • 今までに経験したことのない、バットで殴られたような激しい頭痛(雷鳴頭痛)
  • 50歳を過ぎてから、初めてオーラのような症状を経験した

※当院のオンライン診療は、救急医療には対応しておりません。緊急性が疑われる場合は、お近くの救急医療機関にご相談ください。

くり返す場合は「予防治療」も大切です

オーラを伴う頭痛発作が月に何度もあったり、オーラ自体の症状が強くて生活に支障が出たりする場合は、「発作そのものを減らす」ための予防治療を検討します。

予防治療は、頭痛の回数を減らし、急性期治療薬(頓服薬)が効きやすい状態にするための大切な治療です。

予防薬の種類 特徴とポイント
内服薬
(抗てんかん薬、抗うつ薬、
β遮断薬、Ca拮抗薬など)
患者さんの体質や併存疾患(高血圧、不眠など)に合わせて選択します。
効果が出るまでに2~3ヶ月かかることがあり、毎日継続して内服します。
CGRP関連薬
(抗体薬:皮下注射
関連薬:内服)
片頭痛の痛みの原因物質(CGRP)を直接ブロックする新しいタイプの予防薬です。
月1回(または3ヶ月に1回)の注射などで、発作の頻度を減らします。保険適用には条件があります。
頭痛専門医の前河医師
頭痛専門医のひとこと

「月に数回以上、頭痛で生活に支障が出ている」「頓服薬を飲む回数が月10日に近づいている」…これらは予防治療を始めるサインです。頭痛日誌(アプリなど)でご自身の頭痛の頻度を「見える化」すると、治療の必要性が分かりやすくなりますよ。

不安な時は専門医にご相談ください

前兆(オーラ)は、それ自体がとても不安な症状です。「いつものオーラ」と分かっていても、毎回怖い思いをされているかもしれません。

受診をおすすめする目安

  • この症状が本当に「片頭痛オーラ」なのか、専門医に診断してほしい。
  • オーラや頭痛の頻度が増えてきて、生活や仕事に支障が出ている。
  • 頓服薬の回数が月10日に近づいており、予防治療を相談したい。
  • ピルを飲んでいる(または飲みたい)が、オーラとの関係が心配。

オンライン診療では、患者さんのお話を詳しく伺い、それが典型的なオーラなのか、危険な兆候はないかを見極め、お一人おひとりに合った対処法(急性期治療薬の選択、予防治療の導入)をご提案します。不安なことは、何でもご相談くださいね。

頭痛専門医の写真(前川裕貴 医師)
この記事を書いた医師
頭痛センター長 頭痛専門医 前川裕貴

頭痛は”記録×使い分け”で変えられます。あなたに合う薬・使い方・生活の整え方を、診療とMyカルテで一緒に見つけましょう。

頭痛ダイアリー「Myカルテ」 無料

スマホから簡単に頭痛を記録。当院の受診有無にかかわらず、どなたでも無料でお使いいただけます。

  • スマホで簡単記録 — メールアドレス登録ですぐに開始
  • 気圧アラート機能 — 低気圧を予測し、事前の対策をサポート
  • 医師へ自動連携 — 当院受診時はデータが医師へ自動共有。説明不要でスムーズ
💡 今すぐ使える:新規登録ボタンからメールアドレスを入力するだけ。1分で記録を始められます。

オンライン頭痛外来のご予約

公式LINEから予約し、ご自宅から受診できます。
Myカルテの記録があれば、診察時の説明の手間も省けます。

⚠️ 注意:急な悪化、意識障害、麻痺、激烈な頭痛などの救急症状は本外来の対象外です。すぐに救急外来を受診してください。
ご予約から受診までの流れを見る
  1. 1

    Myカルテ登録(推奨)

    まずはMyカルテに無料登録。日々の頭痛をスマホで記録しておくと、自身の傾向把握に役立ちます。

  2. 2

    LINEから予約

    公式LINEを追加し、メニューから「頭痛外来」を予約。問診票に回答します。

  3. 3

    オンライン診察

    予約時間になったらビデオ通話を開始。Myカルテのデータは医師の手元に自動連携されているため、説明の手間が省けます。

  4. 4

    お薬の配送

    診察後、処方薬をご自宅のポストへお届けします(最短翌日到着)。