専門医の頭痛ブログ

【頭痛専門医が解説】市販薬が効かない5つの理由と正しい対処法

頭痛が辛い時、頼りになる市販薬が効かないと「どうして?」と不安になりますよね。いつもは治まるはずの痛みが続くと、仕事や家事に集中できず、本当にお辛いことと思います。「もしかして、何か悪い病気なのでは…」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、ご安心ください。市販薬が効かなくなるのには、いくつかの理由が考えられます。この記事では、なぜ薬が効きにくくなるのか、そしてどうすれば良いのかを、頭痛専門医の視点から優しく解説していきます。

【この記事のポイント】
  • ✅ 市販薬が効かない主な理由には、頭痛のタイプ、薬の成分、飲むタイミングが関係します。
  • ✅ 薬の飲み過ぎは、かえって頭痛を悪化させる「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」の原因になります。
  • ✅ 市販薬と処方薬の違いを理解し、ご自身の症状に合った対処法を見つけることが大切です。

なぜ?市販の頭痛薬が効かない5つの主な理由

「この前は効いたのに、今日は全然ダメ…」そんな経験はありませんか?市販の頭痛薬が効かない背景には、いくつかの原因が隠れていることがあります。ご自身がどれに当てはまるか、一緒に考えてみましょう。

理由 詳しい説明
1. 頭痛のタイプと薬が合っていない 市販の鎮痛薬は主に「緊張型頭痛」のような一般的な痛みに効果を発揮します。しかし、ズキンズキンと脈打つような「片頭痛」には、専用の治療薬(トリプタン製剤など)でないと効果が薄い場合があります。
2. 薬を飲むタイミングが遅い 特に片頭痛の場合、痛みが本格的になってから薬を飲んでも、効果が出にくいことがあります。「ごく軽い痛み(痛みはじめから1時間以内)」の段階で飲むのが理想的です。
3. 「複合鎮痛薬」に頼りすぎている 複数の成分が入った「複合鎮痛薬」は効果が高いと感じるかもしれませんが、カフェインや鎮静成分が含まれているため、依存しやすく、薬が切れると逆に頭痛が起きることもあります。
4. 薬の使いすぎによる頭痛(MOH) これが最も注意すべきケースです。鎮痛薬を月に10日以上飲み続けていると、脳が痛みに過敏になり、薬自体が新たな頭痛の原因になってしまうことがあります。これを「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」と呼びます。
5. そもそも危険な頭痛が隠れている 頻度は低いですが、くも膜下出血や脳腫瘍など、命に関わる病気が原因で頭痛が起きている可能性もゼロではありません。いつもと違う激しい痛みには注意が必要です。

あなたはどっち?「単純鎮痛薬」と「複合鎮痛薬」の違い

ドラッグストアに行くと、たくさんの種類の頭痛薬が並んでいますよね。これらは大きく分けて2つのタイプがあることをご存知でしょうか。成分表示を見て、ご自身がどちらを使っているか確認してみましょう。

種類 特徴 成分の例 注意点
単純鎮痛薬 痛みや炎症を抑える成分が1種類だけ入っている薬です。 ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど まずはこのタイプから試すのが基本です。胃腸への負担を考慮し、空腹時を避けて飲むのがおすすめです。
複合鎮痛薬 鎮痛成分に加えて、その効果を高めるための補助成分が複数入っています。 無水カフェイン(血管を収縮させる)、ブロモバレリル尿素(眠気を誘う鎮静成分)など 効果を実感しやすい反面、カフェインや鎮静成分への依存性が問題となり、MOHを引き起こしやすいとされています。

もし、あなたが複合鎮痛薬を頻繁に使っていて、薬の効きが悪くなってきたと感じるなら、一度立ち止まってお薬との付き合い方を見直すサインかもしれません。

市販薬と処方薬、何が違うの?

「病院でもらう薬は、市販薬と何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。一番の違いは、「特定の頭痛」に対して専門的に効くかどうかです。

市販薬は、さまざまな原因の痛み(頭痛、歯痛、生理痛など)に広く対応できるように作られています。一方、頭痛外来などで処方される薬には、例えば片頭痛のメカニズムに直接働きかける「トリプタン製剤」や、最近登場した「CGRP関連薬」など、市販では手に入らない専門的な治療薬があります。

医師は、あなたの頭痛のタイプを正確に診断し、数ある選択肢の中から最も適したお薬を処方します。市販薬でなかなか改善しない場合は、専門の処方薬に切り替えることで、長年の悩みが嘘のように軽くなることも少なくありません。

市販薬と上手に付き合うための3つのポイント

市販薬は、いざという時にとても便利なものです。頭痛を悪化させないために、お薬と上手に付き合うためのポイントを覚えておきましょう。

市販薬との付き合い方 チェックリスト

  • 飲むタイミングを逃さない
    「我慢できないくらい痛くなってから…」ではなく、「あ、痛くなりそうだな」という軽い段階で飲むのが効果的です。
  • 回数をしっかり管理する
    頭痛薬を飲むのは、多くても月に10日未満にとどめましょう。カレンダーやアプリに記録する「頭痛ダイアリー」をつけるのがおすすめです。
  • 効かない時は専門医に相談
    「月に10日以上飲まないと生活できない」「薬の量が増えてきた」と感じたら、それは専門医に相談するタイミングです。無理せず、一度診察を受けてみましょう。

また、薬だけに頼らず、日々のセルフケアも大切です。例えば、首や肩の血行を良くする「頭痛体操」などを取り入れるのも良いでしょう。

危険な頭痛のサインと受診の目安

ほとんどの頭痛は命に関わるものではありませんが、中には緊急性の高い「危険な頭痛」もあります。以下のような症状がみられる場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 突然、ハンマーで殴られたような激しい痛みが始まった
  • 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないといった症状を伴う
  • 高熱がある
  • 今まで経験したことのない、最もひどい痛み

【重要】これらの症状は、くも膜下出血や脳卒中などのサインである可能性があります。ためらわずに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。なお、当院のようなクリニックでは、これらの救急疾患への対応はできません。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

市販薬が効かなくなるのは、決して珍しいことではありません。「薬が効かない自分の体が悪いんだ」とご自身を責めないでくださいね。それは、あなたの頭痛の性質が変化したり、お薬との付き合い方を見直す必要があったりする、という体からの大切なサインなのです。一人で悩まず、ぜひ私たち専門医にご相談ください。あなたに合った治療法を一緒に見つけていきましょう。

頭痛専門医の写真(前川裕貴 医師)
この記事を書いた医師
頭痛センター長 頭痛専門医 前川裕貴

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