専門医の頭痛ブログ

緊張型頭痛|重だるい・こめかみギューの正体と整え方|頭痛専門医が解説

緊張型頭痛

頭全体が締めつけられるような重だるい痛み——それは緊張型頭痛かもしれません。日本人の約20〜30%が経験する最も多い頭痛ですが、「たかが肩こり頭痛」と放置されがちです。この記事では、緊張型頭痛の症状・原因・片頭痛との見分け方、そして薬に頼りすぎない治し方まで、頭痛専門医が詳しく解説します。

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【この記事のポイント】
  • ✅ 緊張型頭痛は頭全体が「締めつけられる」「重い」痛みで、吐き気は少ない
  • ✅ 片頭痛と合併しているケースが非常に多い(正しい鑑別が治療の第一歩)
  • ✅ 原因は筋肉の緊張だけでなく、ストレス・姿勢・咀嚼筋・睡眠が複合的に関与
  • ✅ 薬に頼りすぎるとMOHに。ストレッチ・環境調整が治療の軸
目次
  1. 緊張型頭痛とは?症状の特徴
  2. 緊張型頭痛 vs 片頭痛:見分け方早見表
  3. 3つのタイプ:稀発・頻発・慢性
  4. 緊張型頭痛の原因
  5. 薬の治療:使える薬と「月15日ルール」
  6. 薬に頼らない治し方(非薬物療法)
  7. 環境チェック:デスクワークの方へ
  8. 受診の目安

緊張型頭痛とは?症状の特徴

緊張型頭痛は、日本人の約20〜30%が経験する最も一般的な頭痛です。国際頭痛分類(ICHD-3)では「2. 緊張型頭痛」に分類されます。

緊張型頭痛の自己チェック

  • 頭の両側が痛む(片側だけではない)
  • 痛みの質は「締めつけられる」「圧迫される」「重い」(ズキンズキンと脈打たない)
  • 痛みの強さは軽〜中等度(寝込むほどではなく、仕事や家事は何とかできる)
  • 吐き気はない、またはあっても軽い
  • 光や音への過敏は片方だけ(両方は片頭痛の特徴)
  • 体を動かしても悪化しない(むしろ散歩で楽になることも)
  • 持続時間は30分〜7日

よく「肩こり頭痛」「ストレス頭痛」と呼ばれるのがこのタイプです。ハチマキで締めつけられるような、ヘルメットをかぶっているような——そんな表現をされる方が多いです。

緊張型頭痛 vs 片頭痛:見分け方早見表

緊張型頭痛と片頭痛は、治療法がまったく異なります。しかし、両方を合併している方が非常に多いのが実情です。「自分はずっと緊張型頭痛だと思っていたら、実は片頭痛もあった」というケースは頭痛外来では日常茶飯事です。

特徴緊張型頭痛片頭痛
痛む場所両側(頭全体、こめかみ、後頭部)片側が多い(両側もある)
痛みの質締めつけ、圧迫、重いズキンズキン(拍動性)
強さ軽〜中等度中〜重度(寝込むことも)
吐き気なし〜軽いあり(嘔吐することも)
光・音過敏どちらか一方のみ両方あり
動くと変わらない〜楽になる悪化する
前兆(オーラ)なし約25〜30%にあり
トリプタン効かない著効
前川医師
頭痛専門医のひとこと

「ロキソニンを飲めば何とかなる」と思っている方の中に、実は片頭痛が混在しているケースが非常に多いです。緊張型頭痛にはロキソニンが効きますが、片頭痛にはトリプタンやレイボーが必要。正しく見分けるだけで治療の景色が変わります。

3つのタイプ:稀発・頻発・慢性

緊張型頭痛は頻度によって3つに分けられ、治療方針が異なります。

タイプ頻度特徴治療の方向
稀発反復性月1日未満日常生活への影響は軽微鎮痛薬の頓服で十分。受診の必要は低い
頻発反復性月1〜14日仕事や家事に影響が出始める鎮痛薬+非薬物療法。頻度が増えたら予防薬を検討
慢性月15日以上(3ヶ月以上)ほぼ毎日頭が重い。MOHのリスク大予防薬(アミトリプチリン等)+非薬物療法が中心。鎮痛薬は最小限に

慢性緊張型頭痛は慢性片頭痛との鑑別も重要です。「毎日頭が重い」状態が続いている方は、自己判断せず頭痛専門医への相談をおすすめします。

緊張型頭痛の原因:筋硬結と中枢感作

「肩こりが原因」と思われがちですが、実際はもっと複雑です。末梢の筋肉の問題と、脳の痛みの処理の変化が組み合わさって起こります。

末梢の要因:筋硬結とトリガーポイント

緊張型頭痛の患者さんの頭部・頸部の筋肉を触診すると、「筋硬結」と呼ばれるコリコリした硬い塊が見つかることが多いです。この硬結を押すと、頭痛と同じ痛みが再現される——これが「トリガーポイント」です。

  • 僧帽筋:肩から首にかけて。最もよく見つかる。後頭部〜こめかみの痛みを引き起こす
  • 側頭筋:こめかみ周辺。食いしばり・歯ぎしり(ブラキシズム)で過緊張になりやすい
  • 後頭下筋群:後頭部の深層。頭を支える小さな筋肉群で、PC作業の前かがみ姿勢で負荷がかかる
  • 胸鎖乳突筋:首の横。ストレートネックやスマホ首で過緊張に

これらの筋硬結が持続すると、その部位から痛みの信号が脳に送られ続け、やがて脳側の痛み処理にも変化が起こります。

中枢の要因:中枢感作

慢性緊張型頭痛では、中枢感作(ちゅうすうかんさ)という現象が起きていることが分かっています。

  • 本来なら痛くない程度の刺激でも、脳が「痛い」と誤って判断する状態
  • 筋肉の緊張→痛みの信号→脳が過敏化→さらに小さな刺激でも痛い、という悪循環
  • この状態になると、マッサージだけでは改善せず、脳の感受性を下げる予防薬(アミトリプチリン等)が有効になる

つまり、稀発性の軽い緊張型頭痛は「筋肉をほぐせば治る」のですが、慢性化すると「脳の痛みの回路」自体を治療する必要が出てくるのです。

その他のリスク因子

  • ストレス:慢性的な精神的緊張が筋肉の過緊張を維持する
  • 不安・抑うつ:慢性緊張型頭痛はうつ・不安障害との合併が多い
  • 睡眠障害:不眠や睡眠の質の低下
  • 眼精疲労:長時間のPC・スマホ使用
  • 姿勢の問題:ストレートネック、前かがみのデスクワーク

薬の治療:使える薬と「月15日ルール」

急性期治療(痛い時に飲む)

効果注意
NSAIDs(ロキソニン、イブプロフェン等)緊張型頭痛の第一選択。軽〜中等度の痛みに有効月15日以上でMOHのリスク
アセトアミノフェン(カロナール)胃にやさしい。妊娠中も使用可同上
トリプタン効かない緊張型頭痛にはトリプタンの効果なし。片頭痛との誤診に注意

最も重要なルール:鎮痛薬は月15日以内。これを超えるとMOH(薬剤使用過多頭痛)のリスクが高まり、頭痛がさらに悪化する悪循環に入ります。頭痛薬が効かなくなったと感じたら、MOHを疑ってください。

予防薬(頻発・慢性緊張型頭痛の場合)

作用特徴
アミトリプチリン(トリプタノール)中枢感作を抑える(痛みの閾値を上げる)最もエビデンスが強い。少量(10〜25mg)を就寝前。睡眠の質も改善
エチゾラム(デパス)抗不安+筋弛緩不安が強い方や筋緊張が顕著な方に。筋弛緩作用を期待して処方。ただし依存に注意、短期間での使用が原則
チザニジン(テルネリン)中枢性筋弛緩筋硬結が強い方に。僧帽筋・後頭下筋の緊張を直接緩和。眠気が出やすいため就寝前が多い
ミルタザピン抗うつ+鎮痛補助アミトリプチリンが合わない場合の代替

特にデパスの筋弛緩作用は緊張型頭痛に対して非常に有効で、「肩から頭にかけてガチガチ」な方に処方することが多いです。ただし、漫然と長期使用するとベンゾジアゼピン依存のリスクがあるため、医師の管理下で使用期間を決めて使うことが大切です。

薬に頼らない治し方(非薬物療法)

緊張型頭痛の治療では、薬よりも非薬物療法のほうが長期的に重要です。筋硬結をほぐし、中枢感作を和らげるアプローチを組み合わせます。

1. ロキソニンゲルマッサージ

ロキソニンの外用ゲル(ロキソニンSゲル等)をこめかみ、首の付け根、僧帽筋に塗布しながら、指先で円を描くようにマッサージします。

  • 内服と違い全身への吸収はごくわずかで、MOHの原因になりにくい
  • 消炎鎮痛+マッサージのリラックス効果のダブル効果
  • 市販で手に入り、自宅で簡単にできる。意外に評判が良い

2. 鍼灸治療

エビデンスに基づく鍼灸治療は、緊張型頭痛の予防に予防薬と同等の効果があるとする研究もあります(Cochrane Review)。

  • 筋硬結やトリガーポイントへの直接的な治療
  • 自律神経のバランスを整え、筋緊張を和らげる
  • 薬を増やしたくない方にとって有力な選択肢

3. マッサージ・理学療法

筋硬結が強い方には、専門家によるマッサージや理学療法が有効です。

  • トリガーポイント療法:硬結を直接圧迫して痛みを解放する手技
  • 筋膜リリース:広範囲の筋膜の滑りを改善
  • 週1〜2回の定期的な施術で、頭痛の頻度が明らかに減る方も多い

4. ストレッチ・頭痛体操

自宅で毎日できるセルフケアの基本です。

  • 首の回旋:ゆっくり左右に首を回す(各10回)
  • 肩甲骨回し:両肩を前→上→後ろ→下と大きく回す
  • 後頭部のセルフマッサージ:指先で後頭部の付け根(大後頭神経の出口付近)を押す
  • 顎のリラックス:上下の歯を離す意識。「唇は閉じて、歯は離す」を合言葉に
  • 耳の体操:耳たぶを上下左右に軽く引っ張り、回す。側頭筋と咬筋のリラックスに

5. ストレス管理

  • 呼吸法:4秒吸う→7秒止める→8秒吐く(4-7-8呼吸法)
  • 入浴:38〜40℃のぬるめのお湯に15分。筋弛緩とリラックスを同時に
  • 運動:ウォーキング、ヨガ、水泳などの有酸素運動。週3回以上が理想

6. 食いしばり対策

就寝中の食いしばり(ブラキシズム)が緊張型頭痛の隠れた原因であることが多いです。朝起きた時にこめかみや顎が痛い方は要注意。歯科でナイトガード(マウスピース)を作ることを検討してください。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

緊張型頭痛は、筋膜・姿勢・咀嚼筋の影響が大きいです。ワークステーション調整で薬以上に変わることがあります。「薬で治す」より「環境と習慣で治す」が緊張型頭痛の基本戦略です。

環境チェック:デスクワークの方へ

長時間のPC作業は緊張型頭痛の最大のリスク因子の一つです。以下のチェックリストで環境を見直してみましょう。

ワークステーションチェック

  • モニターの位置:目線がモニターの上端と同じ高さか、やや下か
  • モニターとの距離:40〜70cm(腕を伸ばして届く程度)
  • 椅子の高さ:足裏が床にしっかりつくか
  • キーボード:肘が90度に曲がる高さか
  • 照明:モニターに光が反射していないか。部屋が暗すぎないか
  • 休憩30分に1回は画面から目を離し、首・肩を動かしているか
  • スマホ:首を前に突き出す「スマホ首」になっていないか

特に「30分に1回の休憩」は効果が大きいです。タイマーをセットして強制的に休むだけで、頭痛の頻度が目に見えて減る方がいます。

受診の目安

以下に当てはまる方は、専門医への相談をおすすめします。

こんな方は受診を

  • 鎮痛薬を月10日以上飲んでいる
  • 頭痛の頻度が月15日以上に増えてきた
  • 「緊張型かな」と思うが、時々ズキズキする強い痛みもある(片頭痛の合併疑い)
  • ストレッチや環境調整をしても改善しない
  • 仕事や日常生活に支障が出ている

「緊張型頭痛だと思っていたら片頭痛だった」「両方合併していた」というケースは非常に多いです。頭痛の記録を持って頭痛外来を受診すると、正確な診断と最適な治療につながります。

当院ではオンライン頭痛外来でも緊張型頭痛の相談に対応しています。詳しい治し方は緊張型頭痛の治し方|トリガーポイントと薬の選び方もご覧ください。

片頭痛の全体像(症状・原因・種類・治療法)については片頭痛(偏頭痛)とは?症状・原因・種類・治し方もご覧ください。

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前川裕貴 医師

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

日本頭痛学会 日本神経学会 日本内科学会

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