専門医の頭痛ブログ

薬剤使用過多による頭痛(MOH)|「飲むほど痛い」を抜け出す道筋|頭痛専門医が解説

MOH

頭痛薬を飲む回数が増えていませんか? 実は、鎮痛薬を月に10日以上飲み続けると、薬が原因で新たな頭痛が生まれることがあります。これが「薬剤使用過多による頭痛(MOH)」です。日本では約200万人が該当するとも推計されており、決して珍しくない病気です。この記事では、MOHの仕組み、セルフチェック、薬の種類別の危険ライン、そして治療の道筋を頭痛専門医が解説します。

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【この記事のポイント】
  • ✅ 鎮痛薬を月10日以上飲むと、薬自体が頭痛の原因になりうる(MOH)
  • ✅ 複合鎮痛薬(カフェイン+鎮静成分入り)が最もMOHを起こしやすい
  • ✅ MOHは「真面目に頭痛を治そうとした人」がなる病気。あなたのせいではない
  • ✅ 治療には2ヶ月の断薬が必要だが、ゲパント製剤の登場で状況が大きく改善
目次
  1. MOH(薬剤使用過多頭痛)とは?
  2. あなたは大丈夫?MOHセルフチェック
  3. 薬の種類別:MOHの危険ライン
  4. なぜ「飲むほど痛い」悪循環が起こるのか
  5. MOHになりやすい人の特徴
  6. MOHの治療:3つのステップ
  7. 治療の実際と最新の選択肢
  8. 受診の目安

MOH(薬剤使用過多頭痛)とは?

MOH(Medication Overuse Headache)は、頭痛薬を頻繁に使い続けることで、かえって頭痛が悪化・慢性化してしまう状態です。国際頭痛分類(ICHD-3)では「8.2 薬剤の使用過多による頭痛」に分類されます。

もともと片頭痛緊張型頭痛を持っている方が、痛みを抑えるために鎮痛薬を繰り返し使ううちに、脳の痛みに対する感受性が変化し、「薬が切れると痛くなる→飲む→また切れると痛い→また飲む」という悪循環に陥ります。

日本における推定患者数は約200万人。頭痛外来を受診する患者の中では非常に高い割合を占めています。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

MOHは「薬をたくさん飲む人が悪い」のではありません。頭痛がつらいから薬を飲む——それは当然のことです。問題は、正しい診断と治療にたどり着くまでに時間がかかってしまうこと。早めに専門医に相談すれば、MOHは必ず抜け出せます。

あなたは大丈夫?MOHセルフチェック

以下に当てはまるか確認してみてください。

⚠️ MOHセルフチェック

  • 鎮痛薬(市販薬・処方薬を問わず)を月に10日以上飲んでいる
  • 以前より頭痛の頻度が増えている(月10日→15日→ほぼ毎日)
  • 薬が切れると頭痛が起きる気がして不安になる
  • 朝起きた時点ですでに頭が重い・痛いことが多い
  • 薬を「予防的に」飲んでしまう(まだ痛くないのに、痛くなりそうだから)
  • 最初は月に数回の頭痛だったのに、今はほぼ毎日になっている

2つ以上当てはまる方は、MOHの可能性があります。ただし、自己判断で急に薬をやめるのは危険です(反跳頭痛が起こります)。必ず頭痛専門医に相談してください。

薬の種類別:MOHの危険ライン

すべての頭痛薬が同じリスクを持つわけではありません。薬の種類によってMOHになりやすさが異なります

薬の種類MOHの基準代表的な薬品名リスク
複合鎮痛薬月10日以上EVEクイックDX、ナロンエース、セデス・ハイ最もMOHを起こしやすい(カフェイン+鎮静成分の依存性)
トリプタン月10日以上イミグラン、マクサルト、レルパックス、アマージ片頭痛特効薬だが頻用でMOHに
単純鎮痛薬月15日以上ロキソニン、タイレノール、リングルアイビー複合薬より基準は緩いが超えればMOH
オピオイド月10日以上トラマドール等依存性が高い。日本では少ないが注意

特に注意すべきは複合鎮痛薬です。カフェインと鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素等)が脳の報酬系に作用し、「薬がないと不安→飲む→切れるとまた不安」のサイクルを作りやすいのです。市販薬が効かなくなった方は、まず自分が使っている薬が「単純」か「複合」かを確認してみてください。

なぜ「飲むほど痛い」悪循環が起こるのか

MOHのメカニズムは完全には解明されていませんが、以下のことが分かっています。

  1. 痛みの閾値の低下:鎮痛薬を繰り返し使うことで、脳が痛みに対して過敏になる(中枢感作)
  2. セロトニン受容体の変化:特にトリプタンの頻用で、セロトニン受容体の感受性が変化し、薬がない状態で頭痛が起こりやすくなる
  3. CGRP経路の過活動:最近の研究では、MOH状態ではCGRP(片頭痛に関わる神経ペプチド)の放出が増加していることが示されている

つまり、薬で一時的に痛みを抑えるほど、脳は「もっと痛みに敏感になる」方向に適応してしまうのです。この悪循環を断ち切るには、原因となっている薬を一度完全にやめる(断薬する)必要があります。

MOHになりやすい人の特徴

以下に当てはまる方は、MOHのリスクが高いとされています。

  • もともと片頭痛の頻度が高い方(月4日以上)
  • 女性(片頭痛自体が女性に多いため)
  • うつ・不安を合併している方
  • 複合鎮痛薬を常用している方
  • 以前にもMOHを経験したことがある方(再発率約40%
  • 頭痛が起こりそうな時に「予防的に」薬を飲む習慣がある方

MOHの治療:3つのステップ

MOH治療の全体像は、以下の3ステップです。

  1. 断薬(原因薬の完全中止)——2ヶ月間が目安
  2. 予防薬の併用——断薬と同時に開始し、頭痛の頻度を下げる
  3. 背景疾患の治療——MOHの「絡まった糸」をほどく(片頭痛・緊張型頭痛・メンタル・生活習慣)

断薬は最もつらいステップですが、最も重要な一歩目です。最初の3日間が反跳頭痛のピークで激しい痛みに悩まされますが、2週間〜1ヶ月で「あれ、楽になってきた」と感じる方が多いです。

前川医師
頭痛専門医のひとこと

私はMOHをよく「絡まった糸」に例えます。片頭痛、緊張型頭痛、ストレス、睡眠——いろいろな要因が絡み合った結果がMOH。だから単にMOHの治療だけ、片頭痛の治療だけしても糸はほどけない。まず断薬でMOHの糸をほどいてから、次の糸に取りかかるのです。

治療の実際と最新の選択肢

断薬中の具体的な治療の流れ、使える薬と使えない薬、断薬を乗り切るための工夫、メンタルケアの重要性については、別記事で詳しく解説しています。

📖 MOHの治療を詳しく知りたい方はこちら

薬を飲んでも治らない頭痛(MOH)の治し方|2ヶ月の断薬を専門医と乗り越える
断薬2ヶ月間の具体的な流れ、ナルティーク(ゲパント製剤)を「お守り」として活用する方法、ゲルマッサージ・頭痛体操などの非薬物療法、そして何より大切な「伴走するメンタルケア」について解説しています。

ここでは、治療のポイントを簡潔にまとめます。

ゲパント製剤(ナルティーク)の登場——ゲームチェンジャー

従来のMOH治療では、断薬中は「ただ我慢する」しかありませんでした。しかしナルティーク(リメゲパント)は、MOHを引き起こしにくいことが報告されており、断薬中でも「本当につらい時の最後の切り札」として使える可能性があります。

予防薬

断薬と同時に予防薬を開始します。バルプロ酸、アミトリプチリン等の従来薬のほか、CGRP注射薬アクイプタ(2026年4月発売の経口予防薬)も選択肢です。

断薬後のルール

  • 頓服薬の使用は週2回まで(月8〜10日以内)
  • トリプタンを中心に、単純鎮痛薬は補助的に
  • 複合鎮痛薬は原則禁止
  • 月間の服薬日数を頭痛記録で常にモニタリング

受診の目安

以下に当てはまる方は、MOHの可能性が高いです。自己判断で急にやめず、専門医に相談してください。

こんな方はぜひ受診を

  • 鎮痛薬を月10日以上使っている(または15日以上)
  • 以前より頭痛の頻度が明らかに増えた
  • 市販薬が効かなくなった
  • 薬がないと不安で仕方がない
  • 自分で断薬を試みたが失敗した

MOHは治る病気です。しかし、一人で断薬を乗り越えるのは非常に困難です。頭痛専門医と一緒に、計画的に断薬を進めることが成功の鍵です。

当院ではオンライン頭痛外来でMOHの治療にも対応しています。全国どこからでもご相談いただけますので、お気軽にご連絡ください。

片頭痛の全体像(症状・原因・種類・治療法)については片頭痛(偏頭痛)とは?症状・原因・種類・治し方もご覧ください。

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この記事を書いた人

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

前川裕貴 医師

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

2020-23東京大学医学部附属病院 脳神経内科
2023-昭和医科大学 客員講師
荏原ホームケアクリニック
頭痛センター長
2025-合同会社 Iris Wellness 設立
(ズツノート・ズツ便り 開発・運営)

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